DAY 1 (10/15)

JEITA/CIAJ会長 遠藤信博氏インタビュー

データ社会到来 全体最適を作る場に 役割が変わるCEATEC

―市場環境は大きな転換期を迎えています。

遠藤 私たちはこれまで情報化社会にいて価値の源泉が情報だった。ところが今はデータ社会になりデータが価値の源泉に変わってきている。情報はデータを基に出来上がるが、人間が作っているためデータの範囲に限りがあるのが実態だ。データ社会では膨大なデータから答えを導き出せる。データの範囲が広がることはコラボレーションによる価値が増えることを意味している。
 情報を中心とした価値の作り方は限られた範囲になるため部分最適だったが、これがデータ社会になるとコンピュータにより広範囲でデータを取得し答えを出せるようになるため、今までできなかった全体最適の答えが出せるようになる。まさにコラボレーションや異業種連携で新たな価値を作る時代に入りつつある。

―CEATECも変わってきていますね。

遠藤 ハードからソリューションの展示になり、今はコラボレーションの可能性について考える展示会に変わってきている。出展各社も部分最適から全体最適の答えを示す企業が増えてきている。その意味で、CEATECで共創のきっかけが生まれ、CEATECで共創の成果を披露し、それが社会に実装され豊かな未来の実現につながるという一連のサイクルを生み出すことを目指している。

―CEATECの出展企業も内容も変わってきていますね。

遠藤 ハード中心の価値の提供からサービスが全体最適の価値に変わりつつある。特にコンピュータやネットワークの進化が後押ししており、今こそ全体最適が実現できる段階に来たと思っている。その意味で、CEATECで共創のきっかけが生まれ、CEATECで共創の成果を披露し、それが社会に実装され豊かな未来の実現につながるという一連のサイクルを生み出すことを目指している。

―今は全体最適の時代になっているということですか。

遠藤 全体最適を考えると価値が全然違うものになる。例えばシェアリングシステムについて考えてみると面白い。全体最適のシステムの中で最後に人間の社会に具現化しようとするとシェアリングシステムが必要になる。特定の領域では部分最適になってしまう。逆の見方をすると、シェアできる能力を持つときに全体最適ができるということになる。  例えばウーバー・テクノロジーズの配車サービス「ウーバー」もシェアリングエコノミーの一つだが、ハードのシェアリングになる。ハードのシェアリングは全体最適の具現化のためのツールになる。個々のエコノミーではなく、「人間のロジスティクスの最適化とはどういうものか」を考え、ウーバー以外のものもシェアリングできる可能性が出てくると全体最適ができるようになるだろう。
 現在、自動車メーカーが取り組んでいるが、クルマを所有することから使って価値をどう見出すかに変わってきている。人間の移動を全体最適化しようとすると所有ではないという結論になるからだ。バスなどはシェアリングの一部ではあるが、これをさらに一般化しようということだろう。AI(人工知能)が使えるようになると、全体最適という答えを作り得るので、そうするとシェアリングが必要になるということになる。

―CEATECをどのような展示会にしたいですか。

遠藤 全体最適を作る場にしていきたい。皆がソリューションを見せることで新たな気付きが得られるようになる。「もう少し違った全体最適があるのではないか」といった考えも出てくるかもしれない。

―全体最適のゴールはどのように設定すべきでしょうか。

遠藤 低い位置での全体最適もあるが、人間社会全体で見ると高い場所にゴールを置くべきだろう。AIは使えるようになってきた。AIなどを活用し、どこのレベルの全体最適化を目指すかは人間社会に問われている。それを皆で考えるか、自分で考えるかで全然答えは変わってくるだろう。

―やはり皆でやった方がよいということですよね。

遠藤 そういう意識を共有できれば協業するだろう。自分だけだと限界があるが、「もう少し広げることでここまでできる」ということが分かると「他社と一緒にやろう」と思うかもしれない。

―今年のCEATECの見どころは。

遠藤 データ社会に入ったことは確かで、AIが使えることも証明されてきているため、初期段階かもしれないが、AIによってどういった全体最適化ソリューションができているかを観測するのは面白い。自分たちがさらなる全体最適化ソリューションを創ろうという意思を持って見ると、今年は非常に面白い展示になっている。

―全体最適に関してグローバルと比べると日本は遅れているのでしょうか。

遠藤 そのようなことはない。ソリューションという観点で提案できる日本のレベルは高い。ただ、日本の中で実現できるデータセットは限られているため、日本企業がデジタルトランスフォーメーション(デジタル変革、DX)をどのように実現していくかという認識を持たなければならないだろう。

―意識付けをしていくために必要なことはありますか。

遠藤 進化するということは何らかの変化をすることなので、変化を起こすためのトリガーとして展示会を捉えれば、進化のためのいい材料になると思う。展示会というのはそのためにある。

―一方で展示会の在り方が問われています。

遠藤 ただ単にモノを展示するという意味では展示会の意義は薄れてきている。それよりも自分たちの考え方やソリューションの方向感を示すことが次のフェーズを考える上で重要になるのではないかと考えている。CEATEC自体もソリューション展示に移ってきており、展示会として意味があると感じ始めている。

―出展各社も意識を変える必要がありますね。

遠藤 その通りで、私たちは進化し続けなければいけない。ハードのようなプロダクトの展示は海外も含めシュリンクしてきている。そのため高い価値を作り上げる基礎技術を含めた可能性を示すことが企業価値を見せることになると思う。どういうコンセプトで自分たちが価値を作り上げるか、そのための基礎技術にどう力を入れているかが見えると、来場者から見ても非常に面白いし刺激を受けるし参考になるはずだ。

―来場者へのメッセージをお願いします。

遠藤 展示会は価値を受け取る場で済ませずに価値を作り出す場にしてほしい。展示されるものは価値を提供するものなので、それを理解するという観点よりも、展示されるソリューションを基に共創し次の進化も含めて価値を作り出す場として定義すると面白いはずだ。CEATECはSociety5.0を実現するヒントとなる展示やコンファレンスがたくさんある。未来について考え、動き出す契機にしてもらえると主催者側としてもうれしい。