20周年を迎えた今年のCEATECは、フロアレイアウトを全面的に見直し、普段感じることのできない「Society5.0」の世界をこれまで以上に会場で体験できるようにした。会場はまさしく近未来の世界を身近に感じられる環境を整備。来場者に会場で、見て、聴いて、感じて、考えて、共創に向け動きだすという“CEATEC体験”をしてほしいというCEATEC実施協議会の鹿野清エグゼクティブ・プロデューサーに見どころなどを聞いた。
―今回はフロアレイアウトを大きく変えました。
鹿野 幕張メッセの会場は横長なため展示ホールごとに縦割りにエリア分けするのが一般的で、これまでのCEATECも向かって右側が家電メーカー、左側が部品メーカーという配置になっていた。過去、様々なチャレンジをしてきたが、レイアウトは縦割りのまま変えなかった。
16年からはそれまでの「IT・エレクトロニクス総合展」から、「CPS(サイバー・フィジカル・システム)/IoT(モノのインターネット)EXHIBITION」にコンセプトを変更し、会場中央に最新デジタル技術を使った事例やソリューション展示を行うIoTタウンを配置し3分割で展示していたが、会場中央に来場者が集まる傾向があるなど、新たな課題も浮き彫りになった。そこで、より長く滞在でき、歩きやすく見やすいフロアづくりを目指し、今回は横に長い帯のようなデザインにした。
―横のレイアウトは非常に珍しいですね。
鹿野 一つのチャレンジになる。様々な産業向けに提案ができる大手メーカーを一列に並べた「TOTAL SOLUTION」エリアを奥の海側に置き、中央の帯にはSociety5.0のショーケースとなる「Society5.0 TOWN」と国内外のスタートアップを集めた「Co-Creation PARK」、スマートライフやスマートファクトリーなど個々の産業に特化した展示をする「SMART X」を配置した。一番手前の帯には部品メーカーなどが集まる「DEVICE & TECHNOLOGY」エリアなどを置いた。各エリアには大通りを通しており、これにより端から一筆書きでブースが見られるようにした。目的のブースだけでなく、歩きながら新しい発見をしてほしいと考えている。
―今年の見どころは。
遠藤 20周年ということもありキーノート(基調講演)とコンファレンスは時間をかけて準備した。特に4日間連続でキーノートを設けている展示会は少ないと思うが、それぞれの業界をリードする企業の講演は見ものだ。マイクロソフトによる20周年記念特別基調講演も、グローバル企業が考えるSociety5.0について知るチャンスだろう。120以上のコンファレンスもSociety5.0を実現するための技術をはじめ5Gに関するセッションなどを多数用意しており、最新の動向を知ることができる。
展示会場は「Society5.0 TOWN」に注目の異業種企業が出展し、様々な共創を通じて2030年のまちをつくっている。国内外のスタートアップ企業が出展する「Co-Creation PARK」は、まさしく共創の場としていろいろな話し合いやアイデア出しができる場にしたいと考えている。新たに設置した「学生交流ラウンジ」は日本の将来を支える人材との情報交流ができる場として活用してほしい。
―CEATEC体験を掲げましたが、新しい取り組みなどはありますか。
遠藤 今年初めてスマートフォン向けCEATEC公式アプリをリリースした。見学ルートの確認やWebサイトと連動した検索などもできる。コンファレンスの同時通訳機能も搭載した。これまでは専用の端末を会場で配布していたが、今回はスマホを使ってクラウド経由で通訳を聞ける。混雑状況なども把握できるようにする。ぜひアプリを使って、新たな体験をしてほしいと考えている。
―この20年でCEATECは大きく変わりました。
鹿野 00年代は家電やITが中心になり、総合電機メーカーをはじめエレクトロニクス各社が新製品やサービスを出展していた。各社はブランド力の強化などを目的に大々的に会場で新製品や技術をアピールしていたが、インターネット時代の到来、市場の変化などエレクトロニクス業界を取り巻く環境は大きく変わってきた。16年からはコンセプトを変え、Society5.0に向けた展示会として取り組んでおり、エレクトロニクス業界だけでなく様々な業界からの出展が増えた。
18年は出展者数が725社/団体となり、4日間の会期中に15万6000人が来場。1日当たりの来場平均は3万9000人を超え、歴代5位まで伸びた。出展者は3分の1が新規出展となるなど大きく変わっている。また、来場者も昨年はIT/エレクトロニクス業界関連が2万5000人。全来場者の3分の1が初めての来場という結果だった。出展者や来場者が変わることに関しては賛否あるが、それだけ変わってきているという事実は数字から見ても分かる。
―今、世界の展示会も転換期を迎えています。海外の展示会の動きなどをどう見ていますか。
鹿野 現在は1月に米ラスベガスで開催されるCESのCTA(全米民生技術協会)や9月に独ベルリンで開催されるIFAのメッセ・ベルリンとパートナーになっており、相互で問題や課題を共有している。IFAは今年、日本が初のパートナー国となりスタートアップが集まるIFA Nextを実施するなど、様々な施策を打っていると見ている。
こうした海外の見本市は英語が中心になるが、CEATECは日本語が中心だ。ここについてもCEATECの国際化に関する議論を進めてきた。展示会の名称変更もその一つだ。CEATECが取り組むCPS/IoTはグローバルで取り組むべき共通の技術になるため、日本だけでなくグローバル企業からも学ぶ必要があると考えている。
今回、マイクロソフトが20周年記念特別基調講演を行うが、マイクロソフトの考えるSociety5.0について知る良い機会になるはずだ。
―今年の見通しはいかがですか。
鹿野 15年から出展数も着実に増え、今年は750社以上になった。今年は会期中の1日当たりの来場者平均4万人超えを目指し、4日間で来場数16万人を達成させたい。
―これからのCEATECの方向性は。
鹿野 まだ課題も多いが16年からの取り組みで、ようやくCPS/IoT EXHIBITIONとしての手応えを感じつつある。これまでと違い、CEATECの役割が変わってきているし、利用の仕方も変わってきている。オープンイノベーションの時代の中では、従来のようなマーケティングやブランディングのためだけではなく、共創の場になれるよう我々自身も変わっていく必要がある。今年は5Gに関する展示などが多いが、来年には5Gの商用サービスがスタートし、5Gの本格的な活用が始まる。こうした技術の流れにも追従しながら展示の在り方を考えていきたい。