DAY 2 (10/16)

オフグリッド型コネクテッド住宅「OUTPOST」を公開

生活インフラから完全独立、早期実用化に向け実証実験も


プロジェクトの中心メンバーである、左からエムテドの田子代表取締役、
トレジャーデータの堀内マーケティングディレクター、日南の猿渡取締役デザイン本部長

 トレジャーデータ(東京都千代田区)が、5G通信を生かすオフグリッド型コネクテッド住宅「OUTPOST」をCEATECで初公開した。スタートアップを中心とする10社のパートナー企業の技術やノウハウを最大限に活用し、可搬性に優れた「住まい」や「ワークプレイス」の新たな提案を行っている。
同社は、11年2月に日本人が米国で創業したシリコンバレー企業。昨年8月には半導体のIPコアを提供する英国arm社に買収されている。


「2030年のくらし」を提案するオフグリッド型コネクテッド住宅「OUTPOST」

 アームアーキテクチャから吸い上げたセンサーデータなどを管理するデータ管理サービスを提供する中、「これからはデータをどのように使うべきか5、6年悩んでいた」(堀内健后マーケティングディレクター)という。
 そうした中、データを有効活用することで上下水道や電気、ガスなど生活インフラから切り離したオフグリッド型住宅を実現できないかという構想が浮上。住宅内をすべてコネクテッド化し、同社が持つデータ管理・活用の技術を生かしてそれを実現するプロジェクトがスタートした。


OUTPOSTの室内。コンテナ型だが、快適に過ごせる工夫を凝らす

 OUTPOSTプロジェクトがスタートしたのは今年4月。CEATEC開催までの半年余りでスタートアップ技術を中心に10社の協力を得て、2030年のくらしを提案するOUTPOSTのコンセプトが示された。
 コンセプトデザインを担当したエムテド(横浜市青葉区)の田子學代表取締役は「高齢化の進展など日本の社会が抱えている課題は、データをうまく使うことで解決できるのではないかと考えた」と話す。そうした考えのもと、生まれたのが「縛られない」(田子代表取締役)住宅であるオフグリッド型だ。
 家電や自動車などの施策開発を行う日南(神奈川県綾瀬市)の猿渡義市取締役デザイン本部長は「OUTPOSTのプロトタイピングをこれから行い、実証実験に進めていく」とし、製品化に向けた取り組みを加速する考えを示している。
 OUTPOSTはOrigin Wireless Japan(東京都中央区)の無線センシング技術を活用し、ウェアラブル機器を身に着けなくても人の活動状況を把握できるようにしている。IoTやAIを活用した水の循環システムを提供するWOTA(東京都文京区)などスタートアップの独自技術が目を引く。


無線給電する「パワースポット」。
専用マグを使えば日本酒やコーヒーなどを温かい状態に保つことも可能だ

 電気は太陽光発電や電気自動車(EV)の活用を想定。機器への給電は「パワースポット」と呼ぶ無線給電で行う。無線給電スポットを複数用意(コンセプト展示では3カ所)し、50Wの出力まで給電できるため、多くの電化製品に対応できる。
 サイズは40フィート(横約12×幅約2.4×縦約2.5メートル)で、国内外に運べる汎用的なコンテナサイズだ。3人程度が暮らせる大きさで、住み続けるというよりも、別荘やちょっとした働き場など「1年のうち、3分の1や半年住むことを想定している」(堀内マーケティングディレクター)。5Gによるライフスタイルの変化や、「ワークライフバランス」を意識した、場所を選ばない働き方ができることを提案している。


統合アプリでリラックス状態をグラフ化した画面。
無線センシングでウェアラブル機器を身に着けなくてもリラックスした状態などが分かる

 室内環境は統合アプリで管理する。オフグリッドであるため、電気や水、空調などの利活用状況をデータに基づき正確に管理する必要がある。例えば水フィルターの交換は、データを適切に管理することで、長期外出などで使用状況が変化したことも考慮したタイミングで、交換するように手配できるようにする。
 食材配送サービスとの連携も進めていく。「ドローン配送で外部パートナーとの話し合いを既に進めている」(田子代表取締役)とし、オフグリッドであっても利便性を損なわないサービスの仕組みを整えていく。
 現状の課題はトイレの問題だ。水の循環などでも抵抗感を持つ人が多いため、より快適に過ごせるようにするソリューションを模索しており、CEATECでも新たなパートナーを見つけたい考えだ。
 OUTPOSTは新たなライフスタイルの提案にとどまらず、防災面からの効果にも期待している。個人向けに加え、自治体などにも売り込み、早期の製品化を目指していく。通常住宅の建設価格を下回る価格を実現したい考えだ。