DAY 3 (10/17)

20種類のにおいを識別できる

第一精工が匂いセンサー 来年2月出荷


20年2月出荷開始の匂いセンサー「nose@MEMS」(中央上段)、吸引ポンプユニット(中央下段)

 第一精工は匂いセンサーチップを開発し、20年2月から同センサーチップを用いたBtoB向け匂いセンサー「nose@MEMS(ノーズ アット メムス)」の出荷を開始する。20種類のにおいを識別できる匂いセンサーで本体価格9万8000円(税別)。12月から受注を始める。65×70mmの手のひらサイズ。生産は福岡事業所(福岡県小郡市)で行う。
 食品の品質管理、飲料/化粧品の香品質管理、工場の異臭検知、ホテルや介護施設など部屋ののにおい検知、自動車内のにおい管理、呼気や体臭からの疾患簡易検知、開発現場の空間管理などの需要を見込んでいる。
 来春にはスマートフォンの端子に挿して簡易に使える匂いセンサー「nose Stick(ノーズ スティック)」の出荷も始める。10種類のにおいを識別できる。価格は数千円になるもよう。外形寸法32×42×8.5mm。まずBtoBB向けに出荷を開始。出荷規模が拡大した段階で自社通信販売、アプリケーション自社開発を含めてBtoC向け出荷もする予定だ。


来春発売予定のスマートフォン用匂いセンサー「nose Stick」

 また、匂いセンサーの出荷に合わせて、匂いセンサーの協業先を現在の凸版印刷、NEC、味の素ファインテクノ、ぷらっとホームの4社以外に無線通信、AIなどさらに協業先を増やし、様々な匂いセンシングニーズに応えていく計画だ。凸版印刷はセンサーを基軸にした各種ソリューション開発、センサー販売、匂い分析、AI・機械学習の提供、アプリケーション開発。NECはセンサーデータ収集、解析プラットフォーム構築、におい向けデータプラットフォーム、におい向けAI・データ解析。味の素ファインテクノは感応膜の研究開発、用途ごとに最適な膜の提案。ぷらっとホームはOpenBlocksによるエッジコンピューティングの提供、OS搭載IoTゲートウエイの開発、各種通信機能の提供で協業している。
 第一精工技術開発本部長の緒方健治常務取締役は「新規事業として数年前から技術開発本部の電子デバイス開発部でMEMSデバイスの開発に取り組んでいる。既に3軸加速度MEMSセンサーを地震感知器向けに販売するなど成果を出してきたが、シリコン上に形成したチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の圧電薄膜に味の素ファインテクノの感応膜を塗布することでにおいを検知できるMEMSセンサーを開発できた。塗布する感応膜を変えることで異なるにおいを検知できる。1枚のセンサーチップに10種類の感応膜を塗布して10種類のにおいを識別できる。このセンサーチップを2個搭載したセンサーチップモジュールを現在、9組取りそろえ180種類のにおいの検知が可能だ。センサーにAI、データベース、アプリケーションなどを組み合わせて、様々なにおいの課題を解決する匂いセンサーエコシステムの構築を協業体制で推進していく。匂いセンサーをMEMSデバイスの本格商品として立ち上げ、早急に事業部レベルの売上げ規模にもっていきたい」と話している。
 20種類のにおいを判別できる匂いセンサーはセンサーチップモジュール1枚、センサーボディ1、センサーカバー1、標準ソフトウエアからなる。センサー単品、付属品は2個のセンサーチップを搭載した匂いセンサーチップモジュール(税別価格3万円)、センサーボディ(7万円)、センサーカバー(1500円)、フィルター付きセンサーカバー(2000円)、ポンプユニット(5万円)、ハンディポンプ(7万円)で販売する。
 サポート契約として感応膜の組み合わせカスタマイズ/API公開/ファームウエアアップデート/Windows・Androidソフトウエアップデート/専用メール窓口によるサポートなどのベーシックプランのほか、匂い分析サービス/独自のAI・機械学習の提供/データベース構築/アプリケーション開発などのオプションプランも用意する。契約料金は12月に発表予定。
 匂いセンサーはシリコン上にPZTの圧電薄膜を形成。そのうえに異なる感応膜を塗布して検知素子を作る。電気をかけ共振している感応膜ににおい分子を付着させ、共振周波数の変化から数値データを取得、記録する。検知したにおいと記録しているにおいとの数値データを照合することにより、においを識別する。PZT圧電薄膜を用いたMEMSデバイスの活用により、小形、低コスト化でき、検知素子数を増やすことで対象市場を拡大できる。