ディー・エヌ・エー(DeNA)岡村信悟・取締役兼COO
インターネットの歴史とともに歩んできたDeNAは、これから何に挑戦していくのかを話したい。(ゲーム配信サービスの)「モバゲー」、その上で展開するゲーム事業は、収益的に今でも柱であることは事実だ。そのDeNAが、新しい領域に飛び込んでいる。
ヘルスケア事業を2014年から始めた。できる限り自由で楽しい時間を長くする、まさに健康寿命を延伸するということを考えてきた。(健康増進支援サービスの)「KenCom(ケンコム)」は、健康データに応じた情報レコメンデーションを行い、行動を変えてもらう。健診結果などを集めて、それぞれの人に応じた健康づくりを支援できるサービスが急速に普及している。
健康保険組合向けには、80健保、300万人に導入されている。ケンコムを使うと、特に意識していなくても、健康リスクが軽減されていく。個々人がそれぞれの誇りを持ちながら、個々人の思考に応じた生活をしていく。その中で、一回限りの人生を長く楽しんでいくことを支援したい。
2015年から始めたオートモーティブ事業では、あらゆる人やモノが安全、快適に移動できる世界を目指している。大勢の人が一律にバスに乗る、電車に乗るということではなく、それぞれの人に応じて自由に移動できる形をつくりたい。
われわれがまず展開しているのは、個人に寄り添ったサービスであるタクシーを自由に使える社会だ。次世代タクシー配車アプリ「MOV(モブ)」を展開。(プロ野球の)横浜DeNAベイスターズのおひざ元のところで普及が進み、東京、大阪、京都へと広がっている。
最近、高齢者の事故が話題となっているが、AIを活用した事故削減支援サービスを展開している。事故という「結果」につながる前に、運転中の潜在的なリスク要因をAIで徹底的に抽出してドライバーにフィードバックし、アドバイスを提供することで、最大50%近い事故削減が実現できるようにした。
このサービスは今年始まり、急速に普及している。AIが世の中に実効性あるサービスとして展開されている先駆的なものだと自負している。
また、これからの世の中はシェアリングエコノミーだ。車というモノを共有することによってコトにつなげていく。個人間カーシェアリング「Anyca (エニカ) 」はドライバーやオーナーとともに成長し、会員数が25万人以上、登録数も8000台を超えるという状況になっている。
ヘルスケアとオートモーティブは、ビッグデータ、IoT、AIという3つの特徴が顕著に表れている。これらは、個々人の生き方に合わせて自在なサービスを提供することに役立っていく。
もう一つ重要なのはエネルギーインターネットだ。2015年のパリ協定では、地球温暖化対策イコール「ゼロ炭素」という共通認識があり、石炭や石油など「燃やす文明」との決別が求められており、次世代に対するわれわれの義務だと思っている。
災害時にも地域がそれぞれ自立的にライフラインを維持し復旧していくという生命力も必要だ。そのためには、再生可能エネルギーの活用が必要だと思っている。
特にわれわれが着目しているのが、自動運転で始めているIoTによるEV(電気自動車)と再生可能エネルギーの統合制御だ。再生可能エネルギーに関して、需要と供給をうまく調整しながら地域に循環させていく。そのときにポイントになるのが蓄電器で、電気を発生させてためておき必要なときに使う。それを小回りの利く形で実現するときにEVが役に立つ。統合制御によって、再生可能エネルギーの導入を加速させたい。
DeNAは今までの取り組みを踏まえて、まさにインターネットとともに進化しながら、まちづくりにも参画していきたい。災害時にも停止しない便利で快適なスマートシティーを構築するためには、まずは再生可能エネルギーを中心とした電力インフラが築かれなければいけない。それを動力とする交通インフラ、まさにEVが最大限に活用されながら、自動運転も実現していく。そして、IoTによるエネルギーとモビリティーの統合制御で最大の効率と生産性を生み出していく。ただ、効率と生産性はわれわれが目指す最終ゴールではない。人々の感情と向き合い、行動の変容を促す。「需要側」とシステム効率、生産性という「供給側」をマッチングさせ、楽しいサービスとして持続的に創出することが、われわれの真のゴールである。インターネットとともに育ち、エンターテインメントにも精通したDeNAらしいアプローチでもある。横浜、神奈川で作り上げた新しいライフスタイルフォーマットの「共創プラットフォーム」を世界へ発信、展開していきたいと考えている。