DAY 4 (10/18)

広島県 湯﨑英彦知事

AIとインターネットで未来社会を切り拓く広島発デジタルトランスフォーメーション~日本が目指すべきDXの姿~


広島県 湯﨑英彦知事

 今、自治体におけるデジタルフォーメーション(DX)、地域におけるDXは始まったばかりだ。広島県はDXを全面的に進めようとしている。
 私は知事になって10年、3期目になる。その前がアッカ・ネットワークスの経営に携わっていた。さらにその前は通商産業省にいた。12年前にはCEATECでアッカWiMAX推進室長としてWiMAXの広がりを講演した。05年から07年当時いろんな予測をしていたが、全く予想できなかったのは16―18年の広島カープのセ・リーグ3連覇だ(笑)。WiMAXはNTTドコモなどから三、四百億円を集めて免許が取れると思っていたが、免許が取れなかった。次の大きな戦略としてM2M、今でいうIoTをやろうとしていた。当時、M2Mは1兆400億円市場になるといっていたが、18年のIoT市場規模は6兆3000億円で、これも予測できなかった。
 今、広島県知事として広島県を「1st Mover in DXにしたい」と言っている。広島県は自然と都市が融合した環境にある。人口密度、県民所得は日本の平均で日本の縮図だ。日本の様々な条件を広島県で実現できる。そうした中で、広島県で取り組んでいるひとつが水道部門のデジタル化だ。本部にある水道の図面をデジタル化して現場に持って行き、現場では状況をタブレットでデータ化している。次のステップがIoTでいかに管理していくかだ。水の使用量が人口減でどんどん減っていく中で、水道をいかに効率化していくかでDXは非常に重要だ。
 二つ目はInnovation Hub HIROSHIMAというキャンパスを持っていて、いろんな業界、いろんな人にここを拠点に化学反応を起こしてもらおうとしている。9月20日には5Gアンテナを入れ、自分たちで5Gの端末を作り5Gを使った広島エコシステムを作ろうとしている。
 三つ目はひろしまモノづくりデジタルイノベーション創出プログラムだ。広島に本社を構えるマツダは車づくりのデジタル化が最も進んでいて、モデルベース・デベロップメント(MBD)を持っている。試作をスパコンでシミュレーションしてかなり絞り込んでいるほか、MBDを材料などの研究から使っていこうとやっている。広島大学デジタルモノづくり教育研究センターでのデルベース・リサーチ(MBR)と合わせてモノづくりのデジタル化を進めている。
 四つ目はひろしまサンドボックスだ。デジタルで課題を解決していく。3年間で10億円を用意するので、これまで誰もやっていない技術、作ったことのないソリューションを開発してみようと。失敗してもよい、やり直せばよい。砂場で城を作って、形が悪ければ作り直すのと同じことだ。2年目だが、広島県が日本一の生産県のレモンの栽培や牡蠣(かき)の養殖をサンドボックスで取り組んでくれている。ひろしまサンドボックスは今、九つのプロジェクトが走っている。ひろしまサンドボックス推進協議会の会員企業も700社を超えた。

 今年広島県あらゆるものをDX化しようと、DX推進本部を作った。5年先、10年先に向けて今やらなければならないことを整備している。一つは行政プロセスのDX。二つ目は仕事・暮らしのDXで、農業、医療のDXをやっていこうとしている。三つ目は地域のDX、スマートシティだ。主にこの三つに分けて取り組んでいる。行政データだけでなく、いろんなデータをオープン化していくオープンデータ化も柱にしていく。
 土木で言えば、道路維持管理がある。広島県で、のり面のあるところは1140kmあり、年1回ぐらいはのり面岩盤崩落が起きている。のり面にセンサーを付けたり、ドライブレコーダの映像をデータとして撮り、のり面崩落が予想できるとみている。除雪の自動化もいかに低コストでやるかが大きな課題になっている。道路のひび割れはサスペンションのデータを取り続けることで修理の予測ができるのではと、5年間専用車両を走らせて調査している。移住、定住支援でも県職員のノウハウをデジタル化しようと進めている。子どもの見守り支援も児童虐待リスクの家庭を見分けていかなければならない。慎重にやる必要はあるが、学校や支援プログラムなどのデータを総合評価して虐待を未然に防ぐ適切なサポートが家庭、子供たちに届く仕組みを人間とAIのハイブリッドでやっていきたい。
 行政、企業、あらゆる収集されるデータを社会にいかに還元し、活用していくかが大事だ。国でも進めているが、広島県でもデータ連携基盤がどんなものが適切かなど取り組んでいきたい。データのプロトコル、ルール、データにどう価値をつけるか、どう承認していくか、どこまで使って良いかなどを考えていくプラットフォームを広島県でまず、試していきたいと考えている。スマートシティで何ができるか。交通のコントロール、防災、見守り、子供の安否確認、買物など、地域全体から上がってくるデータを如何に全体として活用していくかが本当の価値を生み出してくる。我々はスーパースマートプリフェクチャを目指してやっていきたい。
 次の時代はDXだ。今夏に聴いたヤフーの役員の講演で1900年と1913年のニューヨークの写真を比べ、1900年の全て馬車が、1913年には全て自動車に変わっていた。仕事も馬車関連の仕事はなくなり、自動車関連の仕事に転換した。社会全体がデジタル化して変わっていく中で、広島県は1913年のニューヨークの自動車を売っている人、自動車関係の仕事をしている人のようになりたい。日本全体でオープン アジャイル チャレンジの三の視座で変化し、DXを実現していきたい。広島がデジタルで変わる、広島がデジタルで変えていく。