財団法人資訊工業策進会
卓政宏 執行長に聞く

台湾産業のDX化を推進する資訊工業策進会

卓 執行長

卓 執行長

1979年、台湾政府と民間の共同出資によって設立され、政府の情報通信産業の推進および政策立案のためのシンクタンク、資訊工業策進会(資策会)は、自身を〝デジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)の実現者〟と位置付け、台湾のDXを推進している。資策会の卓政宏執行長に話を聞いた。

日本企業と相互に強み生かすさらなる協業を望む

 日本の経済産業省が今年上半期の「東南アジア等・インド地域を対象にしたアジアDX具体化に向けた実態調査」に台湾を含めたのは、台湾のDX化の進展が注目されているからだ。
 台湾のDXといえば、オードリー・タンIT大臣とシビックハッカーたちが3日で立ち上げたマスク配布システムなどが挙げられる。そのシステムの土台となったのが台湾の「全民健康保険」制度だ。国民一人一人が健保ICカードを持ち十数年経過した。この健保システムが浸透し、医療事務の電子システム化にもつなげた。普及率99.6%に達した全民健康保険システムの作成に一役を買ったのが資策会だ。

政府と民間企業が一体

 台湾では政府と民間企業が同一戦線で経済発展に寄与する大型プロジェクトを立ち上げる。DX推進においても同様だ。そのために台湾政府と民間企業が共同出資して、79年に設立された資策会の役割は重要。
 これまでも資策会は数多くの政府プロジェクトに関わってきた。技術研究開発や人材育成、またICTによる経済発展やインターネットの普及など、台湾社会とともに歩んできた。

DX化推進を支援する資策会

 現在、資策会は製造業のみならずヘルスケア、農業、地方創生など、さまざまな分野で企業向けにDX化推進支援を行っている。農業分野においては台湾茶工場の「台湾農林」が資策会のサポートでDX化を実現。サッカー場1000杯分の元パイナップル畑を茶園に変え自動化、機械化を進め、徹底した省人化を実現したため、2024年に年間3000トンの生産目標を前倒しに達成できると発表した。
 金融領域の支援も行う。日本の金融庁に相当する金融監督管理委員会の下で設置したFintech Spaceは、フィンテック分野のスタートアップ企業に法規制に関する専門家による諮問、コーチング、グローバル市場への進出支援、ワークショップやセミナーの開催などをサポートする。特に「監理外来」という仕組みは、政府とスタートアップが話し合う場を常時設け、法規制に対する疑問を素早く解消できる画期的なアイデアだ。
 医療分野では、喉や胸に電子パッドを装着することで、リアルタイムに患者の呼吸音を計測でき、さらに人工知能(AI)で分析する「聿信醫療社」の技術も資策会の支援で、同社の遠隔診断ソリューションは徐々に医療現場で主流になるだろう。
 日本との多様的なDX協力を前向きに考える中、特に日本は多数の分野で先端技術に強みを持っている。日本企業と相互に強みを生かし補完し合いながら、さらなる協業を心待ちにしている。