台湾経済部工業局電資組副組長兼台日産業連携推進オフィス(TJPO)
呂正欽 執行長に聞く

注力する「スマートディスプレー」

呂正欽 副組長

台湾経済部工業局呂正欽 副組長

  近年、世界的に盛り上がる半導体産業に続き、台湾政府は次なる成長分野として「スマートディスプレイ」に力を入れている。従来から台湾が強みを持つディスプレイの製造技術に5GやAIなどの最新技術を融合させ、新たな付加価値を生み出していく方針。日本・台湾の連携による技術革新を促進し、新たな価値創造につなげていく。スマートディスプレイ市場の現状と日台連携による技術展望について、台湾経済部工業局電子資訊組の呂正欽副組長に話を聞いた。

ディスプレイ産業の現状について教えてください

  呂副組長 これまでディスプレイ産業は昔のような技術革新が少なくなり低迷していた。それが新型コロナウイルスの感染拡大を契機に状況は一変。巣ごもり需要やテレワークの拡大によりディスプレイの需要は急拡大した。AIや5Gの普及に加え、車載、都市開発など新たな需要も生まれ、今後も成長が見込まれる。

台湾政府としてディスプレイ産業に注力する理由は

  呂副組長 もともと台湾は半導体・ディスプレイの優れた製造技術を有し、世界でも数少ない生産大国。マイクロLED、透明ディスプレイ、電子ペーパーなど新たなディスプレイの技術開発も進んでおり、多くの特許も持っている。こうした製造技術だけではない総合力が台湾の強み。政府としても後押しし、世界の技術革新に貢献したい。

ディスプレイの利用領域は広がっています

  呂副組長 エンターテイメントや小売りなど様々な分野での応用が進んでいる。背景にはディスプレイ技術の多様化がある。ミニ/マイクロLEDを使った曲げられるディスプレイや省エネ性が高く屋内外で使用できるディスプレイなどさまざま。それらの技術力を持つ台湾企業が幅広いソリューションをユーザーに提案し、台湾国内で採用が進んでいる。

ハードウェア面以外での強みは

  呂副組長 台湾は製造技術に強みを持つことで、周辺産業も育っている。5GやAIなどの最新技術やIT、ソフトウェアを融合することで新たな付加価値を生み出している。具体的には店舗での受付に顔認証や電子決済を組込んだ事例やインタラクティブなインターフェースの事例などがある。

日本との連携について考えを

  呂副組長 台湾と日本は昔から関係が深い。政府対政府での協力関係を深め、それぞれの強みを生かすことでお互いの成長につなげたい。企業間の連携も同様。
  日本は材料分野で高い技術力を持っている。日本の技術が無ければ、実現できないディスプレイはいくつもある。こうした技術的な連携に加え、台湾で実際に使用されているシステムの事例などを紹介し、日本へのローカライズ化を提案していく。
ディスプレイの連携だけでなく、それを支える半導体チップでも日本と連携したい。工業局は2020年に「AI on Chip産業推進計画」を立て「AI on Chip半導体およびAⅰoT国際商機マッチングプラットフォーム」を作った。AI on Chip リンク
  このプラットフォームはAIチップの産業推進のために設立したサイト。台湾の優秀な半導体企業と連携したい日本企業は、このプラットフォームを利用して欲しい。お互いの強みを合わせて、日台ウィンウィンの関係を構築したい。