企業・高専OB/OGに聞く 紙面 07面

NEC 世の中に必要とされる宇宙へ

衛星から地上システム、データ利用まで

NECは創業時からの通信インフラの技術力を起点に、宇宙開発で日本の宇宙産業を支えている。現在は人工衛星から、地上システム、衛星データ利用、次世代通信まで、宇宙の利活用を総合的に支援する技術サービスが強みだ。NEC Fellow(航空宇宙領域)の三好弘晃氏は「これからの宇宙産業は、衛星やロケットを作る産業ではなく、宇宙空間をプロデュースする産業であるべき」と話す。今回、三好氏に宇宙産業のこれからと高専生への期待を聞いた。

まずはやってみること

──長年NECで宇宙事業に携わってきていますが、宇宙との出会いについて教えてください。

三好弘晃氏
NEC Fellow(航空宇宙領域) 三好弘晃氏

三好もともと宇宙を志していたわけではなく飛行機の仕事をしたいと思っていました。大学で航空工学を学び、当初は航空会社で飛行機の買い付けに関わる仕事を希望していたのですが、就職の縁がなく大学院に進学しました。そこで、後に小惑星探査機「はやぶさ」に搭載されることになるイオンエンジンにつながる研究に関わりました。所属していた研究室とNECとで共同研究したのが縁となりNECに入社しました。

──入社後は大学での研究が業務に生かされたのでしょうか。

三好全くそんなことはありませんでした(笑)。最初の配属は人工衛星搭載機器の開発部署で、電気・電子回路の設計に携わりました。航空工学・機械系出身の私にとっては知識ゼロからの出発でした。これまでは人工衛星のハードウエアやソフトウエア、人工衛星を使うための地上システム、顧客が宇宙を活用できるようにするための業務システムまで携わってきました。まずは与えられた仕事に取り組むことが大事です。そこで面白さや、やりがいにつながることも多いですから。

──NECの宇宙事業の特徴はどこにありますか。

三好衛星通信システムや準天頂衛星システム「みちびき」など、多くの人工衛星に携わっていますので、ハードウエアの印象が強いかもしれません。ただ、強みはハード単体ではなく顧客が宇宙を使える状態にするところまで支援できる点です。当社のシステムは自社製の衛星だけでなく他社製の衛星も運用できます。宇宙を使って顧客がやりたいこと、やるべきことを実現するために必要なものを提供できることが強みです。

技術の優劣から需要創出へ

──現在の日本の宇宙技術は世界と比べていかがでしょうか。

三好もう追いかけるフェーズではないとみています。日本は、無人機による深宇宙探査や、リモートセンシング、衛星測位などで世界的にも高い技術を持っています。これからは技術の優劣ではなく、需要をつくることが重要です。宇宙を民間利用に広げるには、観測や通信、測位といった従来の使い方だけでなく、「そんな使い方があるのか」と思われるような新しい使い方を生み出す必要があります。宇宙の新しい使い方は宇宙業界の中だけを見るのではなく、宇宙業界の外を探す、すなわち地球温暖化や激甚災害、人手不足、AI(人工知能)やロボットとの共生といった社会課題に対し宇宙がどう貢献できるかを考えることが重要です。当社が目指す方向も「世の中に必要とされている宇宙」です。

──「宇宙」は一言でいうと、どのような世界なのでしょうか。

三好私は「いろいろ試せる実験場」だと思っています。宇宙は、サイエンスの世界では「ユニバース」ですが、エンジニアリングの世界では「スペース」、つまり「空間」です。使い方によってどうにでも変えられるからこそ、新しいものが生まれる場所になります。宇宙産業は「衛星やロケットを作る産業」ではなく、「宇宙空間をプロデュースする産業」でなければならないでしょう。

「へこたれない」が重要

──NECで働く魅力はどこにありますか。

三好当社は大企業でありながらスタートアップ気質があります。もちろん、お客さまにご迷惑をおかけするようなことはいけませんが、基本的には挑戦することを止めません。「技術で負けたくない」と思っている人が多く、「技術的に突破できないからやめる」といった例はあまりありません。その意味でも「へこたれない人」が求められます。新しい価値をつくる仕事は、時間をかけた分だけ成果が出るとは限りません。それでも自分がやっていることに価値があると信じて粘ることが重要です。AIが進展する時代には、知識をどう使い、世の中の課題をどう解くのかを考える力が必要になります。

──高専の皆さんへのメッセージをお願いします。

三好NECでは高専出身者が多く活躍しています。高専生の強みは「まずはやってみよう」という実践寄りの姿勢です。理屈だけ追いかけるよりもまず、作って試し、見当をつける方が早いケースもあります。早い時期から実践経験を積んでいる高専生は突破力があると思っています。

高専生の皆さんには、まずは宇宙産業を狭く見ないでほしいです。人工衛星やロケットは目的ではなく手段です。先にある目的を実現するための道具として宇宙技術があるのです。もう一つは技術を社会にどう使えるかを考えてほしいです。ICTやAIは道具です。何に使うかを突き詰めることで新しい需要や商品が生まれてくるでしょう。宇宙に興味を持つことは大切ですが、対象は宇宙に限らなくてもよいのです。機械、電気電子、情報など、どの学科でも宇宙への入り口はあります。

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