企業・高専OB/OGに聞く 紙面 10面
真空技術で宇宙を支える
昭和真空|地上で宇宙環境を再現、スペースチャンバーで存在感

真空装置メーカーの昭和真空は、水晶デバイスやカメラレンズなどの光学部品、電子部品などの分野で培ってきた真空装置技術を応用し、宇宙産業用の真空装置「スペースチャンバー」を展開している。〝空気のない〟宇宙で動かす機器を開発する上で真空装置は欠かせない存在で、同社が長年培ってきた真空技術は、人工衛星をはじめとする、あらゆる宇宙向け装置の試験や評価を支える基盤になっている。個々の顧客が抱える課題に耳を傾け一緒に装置を作り上げる同社の伴走型製品開発は他社にない強みで、引き合いも増えている。
昭和真空は1953年の創業時から真空技術に特化した事業を進め、スマートフォンや映像機器、自動車、医療などの分野で不可欠な機器類の生産に深く関わっている。特に水晶デバイスや光学デバイス、電子デバイスの製造では、同社の真空技術が欠かせない存在だ。企業の要望に柔軟に応えながら真空装置を供給できることが大きな特徴で、取締役執行役員で営業本部長の瀧本昌行氏は「お客さまが欲しいもの、世の中が欲しいものを聞き、装置を開発し供給している」と話す。
同社は全従業員約200人の半数が技術開発と生産現場に携わっている。各分野で縦割りの組織体制を敷かず、それぞれの顧客の要望を受けて開発した新技術を他分野にもすぐに横展開できるようにしている。「最先端の技術をお客さまの要望に合わせて組み合わせることができる」と瀧本氏。最新技術を組み入れた真空装置を低コストで開発できる同社ならではの強みになっている。
顧客の声聞く伴走型の開発

宇宙産業に関わりを持ったのは2018年ごろにさかのぼる。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の関係者から「小型の真空装置が欲しい」と相談を受けたのがきっかけだ。瀧本氏自身が、同社の既存の真空技術を組み合わせて低コストかつ短納期で仕立てた。事業化を想定した開発ではなかったというが、常に顧客の声を聞きながら最新の技術を組み合わせて真空装置を組み上げるという同社の開発体制だからこそ実現できた。
当時、スペースチャンバーは個別受注での生産が一般的だったため、納期がかかり高額になる傾向があった。納入したスペースチャンバーはJAXAから高く評価され、その後は追加発注だけでなく、大学や宇宙関連の民間企業へも評判が広まった。受注が着実に増えてくる中、ここ数年は宇宙産業が注目され始めていることも追い風になり、人工衛星メーカーや電子部品メーカー、機械部品メーカーなど、宇宙に関わる企業からの引き合いも増えている。
過酷な宇宙環境を再現
スペースチャンバーは、人工衛星をはじめ、電子部品、機械部品、スラスターなどを宇宙空間に近い真空環境で評価するための装置だ。瀧本氏は「宇宙に持っていく機器は、打ち上げ前に必ず地上で性能試験評価をする必要があるため、真空装置はなくてはならない」と話す。
例えば地球を約90分で一周する人工衛星は太陽が当たる時間は高温になり、地球の影に入ると-100℃まで一気に低下する。45分周期で高温と低温を繰り返す過酷な環境にさらされる。これを地球上で再現できなければならないのだ。同社のスペースチャンバーはこうした過酷な宇宙環境を地上で再現できる点が他社にない強みになる。
実際、需要の拡大を受け、同社では2023年にスペースチャンバーの標準的な製品をそろえ提案を始めた。
受注生産が中心のスペースチャンバーをカタログモデルとして販売しているのは同社のみだ。もちろん要望に合わせて柔軟に仕様変更できる。
同社にとってスペースチャンバーの事業は、大きな柱になりつつある。これまで水晶デバイスやスマホのレンズなどの光学分野が主軸になっていたが、現在は宇宙関連事業の売上高が最も高くなっている。瀧本氏は「宇宙産業が拡大すれば、それだけスペースチャンバーの需要が伸びてくる。国内のスペースチャンバーの市場を宇宙先進国の米国レベルまで引き上げられるようにしていきたい」と話している。
働く人に聞く
顧客と向き合う力が宇宙につながる
昭和真空は「ニッチな分野でナンバーワンを増やす」という考えのもと、顧客と伴走しながら独自の技術を磨き専用の製品開発を進めている。技術開発出身者が営業を担当しているほか、文系であっても真空技術を学び、顧客との対話をしながら装置の仕様を考え設計できるようにしていることも大きな特徴だ。同社の宇宙事業をけん引する2人に話を聞いた。
よい人工衛星にはよい試験機が不可欠

瀧本氏私は学生時代に重力波観測の研究に携わっていましたが、より目に見える形で世の中に役立ちたいと思い昭和真空に入社しました。その後、光学分野などの真空装置の開発に携わり、再び宇宙と関わることになりました。
宇宙に持っていくものは地上での真空試験が不可欠です。よい人工衛星を打ち上げるにはよい試験機が必要です。当社はやる気があれば何でもチャレンジできる企業風土があります。これからは真空技術を通じて日本の宇宙産業を支えていきたいと考えています。
顧客の課題に向き合い挑戦

藤﨑氏もとは宇宙を志して入社したわけではありませんでしたが、現在はスペースチャンバー関連の主要営業担当として国家プロジェクトにつながるような案件にも携わっています。最近は衛星通信をはじめ、人工衛星関連の案件が増えてきています。
宇宙関連市場が大きくなってきている中で、最先端の研究者や企業と関わりながら、壮大な仕事に携われる面白さを感じています。当社は手を挙げれば、さまざまなことに関われます。業務をする中でお客さまの課題に向き合いながら新しい分野にも挑戦できますので、大きなやりがいを感じています。