まず読みたい 紙面 06面

宇宙は“使う”時代へ

衛星データ、測位、通信で新産業創出へ

宇宙産業は今、新たな段階に入っている。これまでの宇宙開発は国が主導する大型プロジェクトの色合いが強かったが、昨今は民間企業やスタートアップの参入が進み、ロケット開発や人工衛星開発だけでなく、衛星が取得するデータを活用し、防災や農業、物流、インフラ管理といった地球上の社会課題を解決するサービスなどの開発に広がりつつある。宇宙は“行く”“つくる”だけでなく、“使う”時代になってきた。社会課題の解決には、業界を限定せず、さまざまな技術や知見を組み合わせて社会実装していく力が求められている。まさしく高専生の学びが宇宙産業に生かせる時期にきている。宇宙産業の今を追った。

宇宙は“使う”時代へ

官民で広がる宇宙市場

宇宙産業は成長段階に入っている。Space Foundationのレポートでは、世界の宇宙経済は2024年に過去最高の6130億ドルに達し、中でも商業部門が成長分の78%を占めた。また世界経済フォーラムとマッキンゼーのレポートによると、宇宙経済は2035年に2023年比約3倍となる1.8兆ドル規模まで拡大する可能性を示している。

日本を見ても拡大基調になってきた。日本の宇宙産業はこれまで大手メーカーが中心に関わってきていたが、近年は宇宙関連スタートアップの参入が相次いでいる。SPACETIDEによると、日本の宇宙産業には、既に120社以上の多様な業種の企業が参画しているだけでなく、大学発など約100社の宇宙ベンチャーが生まれてきている。市場規模は約4兆円で、政府は30年代早期に倍の約8兆円を目指すとしている。

産業基盤を好循環に

ただ現状を見ると日本の宇宙産業は世界と比較すると規模が小さい。経済産業省によると、日本の宇宙産業は「データ利用少」「衛星生産少」「打ち上げ機会少」の“三すくみ”の構造から、データ利用や衛星生産、打ち上げ機会が増える“好循環”の構造に変える必要があると指摘。多数の人工衛星を連携させて運用する「衛星コンステレーション」や打ち上げの高頻度化に対応できる産業基盤の構築が求められるという。

実際、政府を挙げた宇宙産業の後押しも活発で、産業構造の転換を目指している。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙戦略基金では、「輸送」「衛星等」「探査等」の3分野で、最大10年にわたり技術開発に取り組める支援をしている。

こうした中、衛星データ利用は広がりを見せてきている。これからは地球観測や測位、通信など、衛星データを使ったサービスの提供が経済成長の原動力になるとの見方も強く、いかに競争力のあるサービスを創出し、国際市場を獲得していけるかが重要になってくる。

実際、AI(人工知能)を活用した衛星データの解析技術も進んでおり、衛星データの民生利用はさまざまな分野で広がってきた。経済産業省でも、衛星データを活用した新たなビジネスの創出の促進を目指し、クラウド環境で衛星データを利用できる「Tellus(テルース)」を開発した。こうした動きも宇宙産業の拡大を後押ししている。

小型衛星、測位で用途拡大

衛星開発では小型衛星化がさらに進み、小型衛星コンステレーションが重要な鍵を握ってくる。BryceTechの調査では、24年だけで約2800機の小型衛星が打ち上げられ、小型衛星が全宇宙機の97%を占めたとしている。小型衛星を連携して運用する小型衛星コンステレーションは、地球観測や衛星通信で新たな社会価値を生み出す成長分野とみられている。

政府でも経済社会や安全保障の基盤となる重要産業と位置付けている。

衛星データの利活用は地球観測に限らない。測位や通信も社会課題解決の重要な基盤になる。日本の衛星測位システムの準天頂衛星「みちびき」は、7機体制になると、日本上空に常に4機以上の衛星が滞空するため、みちびき単独での持続測位ができるようになる。これが実現すれば、自動運転やスマート農業、物流、建設、防災など、幅広い分野で応用できるようになる。

宇宙を使うためには、さまざまな技術や知見が必要だ。そして宇宙産業を支える技術は、機械、電気・電子、情報、材料、制御、通信など多様だ。まさしくこれからは幅広い技術を生かしていかなければならず、高専生が学ぶ技術が宇宙を使うサービスの現場で求められている。

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