高専から宇宙へ 紙面 16面

宇宙システム利活用人材育成特別課程 スタート

国立高専初の正規科目

2026年度、「宇宙システム利活用人材育成特別課程」が開講した。宇宙産業に貢献できる人材育成を目指した国立高等専門学校初の正規科目だ。講義は新居浜工業高等専門学校で行い、単位互換制度を利用して全国の高専から受講できる。今、ロケットや人工衛星を作るだけではなく、宇宙から得られる情報を利活用して社会を豊かにできる人材が求められている。特別課程では、宇宙を〝使う〟視点から、高専生の専門性と宇宙産業を結び付ける新しい学びを進める。

特別課程は、宇宙産業の全体像を知ることに始まり、宇宙を使った社会課題の解決を考えていく。宇宙の基礎を身に付けた上で、実際に宇宙の活用を実践する。衛星データの利活用や宇宙機開発のプロセスなども学ぶことができる。新居浜高専電気情報工学科の若林誠准教授は「講座を通じ、宇宙を利活用できる課題解決型人材を育成していく」と話す。

特別課程の学びの流れ

宇宙産業の基礎から利活用まで

特別課程は前期に「宇宙産業概論」を学ぶ。前半は宇宙産業の概要を広く学ぶもので、ロケット、人工衛星、地上設備、衛星データ活用などを学習。後半は課題解決ワークを中心に行い、宇宙を使い、どのような社会課題が解決できるかを考えていく。ここで宇宙を“使う”力を養う。学生自らが課題を定義し、衛星データなどを使った解決方法を検討するとともに、データで社会を見ていく力も養っていく。

後期は「宇宙機開発プロセス演習」を行う。前期で学んだ課題解決の考え方を踏まえ宇宙機を開発する際の考え方を学ぶ。ここではシステムズエンジニアリングやプロジェクトマネジメントの要素を取り入れた演習を行っていく。衛星開発を主眼に置きながらも従来のような「ものを作る講座」ではなく、開発手法やプロセスの理解を中心に据えている。演習では具体的にミッション定義や要求追跡、設計審査、プロジェクト管理といった、宇宙機開発の現場で用いられる考え方を模擬的に学ぶ。

専門を宇宙につなげる学び

前期、後期を通じて、宇宙産業を学ぶだけでなく、自分自身が専攻している学科やコースとのつながり、どのような技能が必要なのか、といったことを身近に感じられるようになる。高専は機械、電気電子、情報、材料といった、宇宙産業を支える幅広い技術分野との関係が深い。若林准教授は「機械や電気、制御系の学科だけでなく、化学や建築など幅広い学科から受講してもらいたい」と話す。後期を担当する香川高等専門学校電気情報工学科の村上幸一准教授は「社会実装や身の回りの課題解決と結び付けると身近なテーマとして捉えられる」と言い、宇宙は遠い存在ではないことを強調する。

特別課程の前身となる、昨年度までの講座や合宿型カリキュラム「高専スペースキャンプ」を受講した学生からの評価も高い。明石工業高等専門学校電気情報工学科3年の阪田結菜さんは「人工衛星を作りたいという夢がより具体化した」と振り返る。香川高等専門学校高松キャンパス電気情報工学科5年の葎迫千翔さんは「進路に対する考え方が広がった」という。

宇宙産業に必要な力を習得

宇宙産業自体が今、大きく変わろうとしている。より幅広い人材が必要となる中で、高専生の持つ力がさらに必要になってきている。前期を担当する奈良工業高等専門学校電気工学科の芦原佑樹教授は「宇宙の利活用について世界中が知恵を絞っている段階。これからの世界で必要となる、考える力、全体をデザインする力、新しいものを構想する力を付けられる」とみる。徳山工業高等専門学校機械電気工学科の池田光優教授も「宇宙産業に必要となるスキルが身に付けられる」と話す。

2025年度の講座に続き、特別課程も受講している米子工業高等専門学校総合工学科電気電子コース4年の遠藤愛さんは「もっと間接的に宇宙に関わる会社の話も聞きたい」と言い、宇宙産業の裾野の広さを実感している。奈良工業高等専門学校情報工学科在籍中に高専スペースキャンプに参加した米田竜也さんは「今後は情報技術の発展が宇宙開発を後押しするとみている」と言い、東北大学大学院情報科学研究科応用情報科学専攻に進み研究を続ける。群馬工業高等専門学校機械工学科の徳光政弘准教授は「情報系の学生が活躍できる余地は大きい」とみる。

高専教育にとって新たな一歩として歩み出した特別課程。国立高等専門学校機構の中島英治理事長は「ぜひ注目してほしい」と話す。宇宙を“つくる”力だけでなく“使う”力を育てる取り組みとして全国高専生に新たな学びの場を提供していく。

特別課程を構成する2科目

科目名主な内容キーワード身に付く力
①宇宙産業概論宇宙産業の全体像を学び、社会課題の解決に宇宙をどう生かすかを考える。後半は課題解決ワークや発表も行うロケット/人工衛星/地上設備/衛星データ活用/社会課題解決宇宙産業を広く理解する力、課題を見つける力、データで社会を見る力
②宇宙機開発プロセス演習宇宙機開発の流れを演習形式で学ぶ。ミッション定義、要求追跡、設計審査、プロジェクト管理などを模擬的に体験するシステムズエンジニアリング/ミッション定義/要求追跡/設計審査/プロジェクト管理全体を設計する力、構想する力、開発プロセスを理解する力

ロケットや人工衛星を“つくる”だけでなく、宇宙を“使って”社会課題を解決する視点を学ぶのが特別課程の特徴。

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