2026年4月スタートの「モバイルバッテリー安全性・品質ガイドライン(GL-015)」とは

 モバイルバッテリーの発火事故が増加していることを受け、モバイルコンピューティング推進コンソーシアム(MCPC)は2026年4月、モバイルバッテリーの安全性と品質向上を目的とした「モバイルバッテリー安全性・品質ガイドライン(GL-015)」を策定した。ガイドラインは電気用品安全法(PSEマーク)に基づく法令対応とは別に位置づけられるもので、製造からアフターサービスまで業界横断的な指針となる。消費者がより安全な製品の選択ができる新たな目安の一つとして訴求していく。

安全性を〝見える化〟

 ガイドラインの最大の目的は、モバイルバッテリーの安全性を〝見える化〟することだ。現在、モバイルバッテリーは、価格や容量、機能、ブランドなどが異なるさまざまな製品が出回っている。ところが、消費者は外観や仕様だけから安全性を判断することは難しいのが実情だろう。MCPCでは、こうした課題を解決していくためにガイドラインを制定し、安全性の指標の一つとして判断できるようにした。

 具体的には、モバイルバッテリー事業者がガイドラインへの適合を自己宣言し、MCPCで受理と登録をすると、登録した製品に「MCPC GL-015適合マーク」を表示できるようにするもの。消費者には、このマークを製品選択の目安として活用してもらえるようにする。

 では、電気用品安全法(PSEマーク)で確認する安全性と、GL-015が補う領域はどう違うのだろうか。

PSEとGL-015の違い

 電気用品を国内で販売するためには、製造または輸入する事業者が電気用品安全法で定められた技術基準への適合性を自ら確認し、法令で定められた手続きを経た上で対象となる電気用品にPSEマークなどを表示しなければならない。一方、電気用品の安全性をさらに高めていくためには、法令で定められた電気用品の技術基準への適合確認に加え、製造工程を含めた対応も重要になるとMCPCではみている。

PSEを補完

 GL-015 はこうした課題に取り組むために策定された。PSEマークを代替するものではなく、PSEマーク適合を前提としながら、法令上の製品試験では十分に確認しきれない領域を補完する。ガイドラインでは、完成品の試験ではなく、製造工程の管理やサプライヤーの管理、製品ごとの品質の均一性、トレーサビリティー、販売後の問い合わせや事故対応までを盛り込んでいる。つまり、PSEマークは、電気用品が電気用品安全法で定められた技術基準に適合していることを確認する仕組みであるのに対し、ガイドラインは、製品が継続的でかつ安定した品質で作られているかを確認するための仕組みになる。

 MCPCで製造工程の管理を重要視しているのは、製品の品質を大きく左右するのが製造工程にあるからだ。セル製造時の設備や作業、検査、工程管理などによって安全性は大きく変わってくるとみている。

 以前、市場で販売されているモバイルバッテリーを無作為に購入しX線で内部確認した際に、外観上は問題がなくても電池内部で本来発生すべきではない「巻きずれ」が確認された製品があった。こうした製品が一定の割合で混入すると、発煙や発火事故のリスクを高めてしまう可能性がある。その意味でも「どのように作られたか」を見ていくことは非常に重要になってくる。

安全性を支える4つのポイント

GL-015の4つのポイント

 GL-015の内容を大きく整理すると①製造工程の品質管理②サプライヤー管理③トレーサビリティー④アフターサービス―の4つに分類でき、製造から販売後まで一貫して確認できるようにすることを主軸にしている。

 まずは製品ごとのばらつきを抑え、不良品の混入を防ぎ、セル、電子部品、保護回路などの供給元を適切に選定し管理することを徹底。これにより製品の品質を安定して高められるようにする。さらに万が一の事故や不具合が発生した際の、製造工場や部品、ロットなどを追跡できるようにすることで、再発防止を効果的に行えるようになる。問い合わせ窓口や苦情や事故対応、製品回収までの体制を整えることで、より安心して製品を使ってもらえるようになる。

 GL-015は、第三者認証ではなく、事業者自ら適合を確認して宣言する「自己適合宣言制度」を採用している。これはメーカー側にとって、より取り組みやすくするためでもある。第三者認証は費用が高額になるため、販売単価が低いモバイルバッテリーなどの場合は、幅広い企業が取り組みにくいという課題もある。そこで自己適合宣言制度にすることで取り組むためのハードルを下げた。半面で自己適合宣言の信頼性をどのように担保していくかも課題だが、MCPCは、適合マークを表示して市場に流通している製品を購入し、抜き取り試験を行うことで、制度の信頼性を担保していく計画だ。

モバイルバッテリーが市場に出るまで

 GL-015により、消費者は容量や価格だけでなく、安全性を考えて製品を選べるようになる。メーカー側にとっては、自社が実施している品質管理や安全対策、アフターサービスをわかりやすく説明できる。業界にとっても品質管理の考え方を共有できるため、安全性の底上げにつながる。MCPCでは「製造工程からアフターサービスまで一貫して網羅する業界初のガイドラインになる」としている。