2023.01.20PR 【PR】エヌエフホールディングス 量子コンピューターの未来 第3回

エヌエフホールディングス×藤井啓祐教授

第3回(全3回)

経営、技術...その道の “匠” の理念、体験、思いを紹介する「匠が語る」。
社会課題の解決に役立つ可能性を秘めた“量子コンピューター”に携わる3人が登場。

次世代コンピューター開発の最前線を支える電子計測器メーカー
エヌエフホールディングス高橋常夫会長と、渡辺啓仁基礎技術研究センター長。
そして米グーグルの「量子超越」で査読も担当した注目の研究者:藤井啓祐教授。

最終回は、量子コンピューティングのこれからと量子技術の発展について。

―「量子技術があふれる世界」へ―

高橋 量子コンピューターのファンが増えればスタートアップも増えていくでしょう。

藤井 オランダではスタートアップがたくさん立ち上がってエコシステムを形成しています。日本でも大学や企業が連携して、もっと立ち上がっていくべきだと思います。

量子を研究するには実験も理論もある程度分かる必要があります。実験系にも超伝導や光、イオントラップ、冷却装置などいろいろあり、たくさんの知識が必要です。しかもプログラミングも使うので、量子コンピューター以外でも活躍できる。量子人材が集まるところは「人材の宝庫」です。

高橋 量子コンピューターには、研究者や技術者が総合的・体系的に知識を学べる面があるのですね。量子コンピューターを起点に量子科学という形でいろいろな研究が広がっているようですね。

渡辺量子コンピューターの技術を確立すると、量子や量子物理に関して非常に理解が広がるでしょうね。計測技術も、今とは全く違うものが出てくるでしょう。

当社は比較的低い周波数帯が得意ですが、今後、もっと周波数の高い計測領域も果敢に挑戦して、いち早く最適な計測装置を提案するため、社内ベンチャーの立ち上げも含めぜひやっていきたいと思います。

高橋エヌエフグループには9つの会社があり、それぞれがスタートアップスピリッツを持って事業を展開しています。

アナログ技術をさらに追求し、量子コンピューターの分野で貢献したいと考えています。

最後に、研究者としての抱負をお聞かせください。

藤井 量子コンピューターが本当に産業界に羽ばたくところを見てみたいですね。「りょうこ」を経由して、エヌエフさんなど企業の方と知り合い、仲間集めをしながら進めるのは楽しいです。

量子計測や量子通信、量子インターネットなどもっと量子技術があふれる世界、社会インフラの中に量子技術が溶け込んだ世界になれば、もっと面白い量子コンピューターの使い方が出てくるかもしれません。

私はそれを誰よりも先に見つけたいです。「それを見つけたのは私です」と言えるようなことをしたいですね。

高橋そのターゲットに向けて私たちもできるだけチームに貢献できるように頑張っていきたいと思います。

藤井はい。ぜひ「チーム量子コンピューター」に(笑)。

<全3回終了>

量子コンピューター開発に貢献する
エヌエフの低雑音信号処理技術

エヌエフの低雑音信号処理技術と量子コンピューター開発との関わりは、1990年、MRI(核磁気共鳴画像法)向けに特注で製作した低雑音増幅器にさかのぼる。

MRIは強力な磁石と電波で磁場を発生させて体の内部の断面をさまざまな方向から画像化できる技術。

この際に、アクティブ入力インピーダンス技術を開発・実用化、熱雑音の影響を大幅に低減することに成功した。

同技術は超低雑音増幅器「SA-230F5」の製品化に生かされることになる。今に続く低雑音増幅器「SAシリーズ」の最初の製品だ。

低雑音増幅器SAシリーズ

「SA-230F5」は片線接地入力だったが、超伝導センサ研究所より、多チャンネルのSQUID (Superconducting Quantum Interference Device)からの信号検出に低ノイズの差動入力アンプの要求があった。

当時、超伝導センサ研究所は、脳の電気活動に伴う磁場の変化を計測する「脳磁計」を研究していたが、多チャンネル化に必要な超低雑音(1nV/√Hz以下)の差動アンプは市場になく、開発に苦戦していた。

そこでエヌエフは、社名の由来にもなっている、「ネガティブフィードバック技術」を応用した超低雑音差動増幅器(0.4nV/√Hz)を開発、1MHzの高速位相検波器(当時は100kHzが限界)と組み合わせて「64チャンネル変調型FLL(フラクスロックドループ)」という脳磁計に搭載する電子回路を超伝導センサ研究所に納めることになる。

なお、このアンプは後に「SA-430F5」として、SAシリーズに追加され、1995年には、ジョセフソンコンピュータチップの信号検出にも使われた。

現在、アニーリング型量子コンピューターの中には、SQUID型の検出回路を使用しているものもある。

MRI向けをきっかけに、究極のスペックに取り組んできたエヌエフの低雑音増幅器。
MRIは超強磁場にして画像を高解像化するが、強磁場の装置は大型で人体への影響が懸念され、冷却に用いるヘリウムは戦略物資でもあることから、近年は弱磁場を用いたMRIが注目されている。

弱磁場にすると、そのままでは解像度が低下してしまうが、SAシリーズの低雑音化技術により解像度の劣化を抑制することができる。

エヌエフのSAシリーズの特注品である「MRI向け低雑音増幅器」は弱磁場から強磁場まで対応 。米 ハーバードメディカルスクールの研究設備に納入され、現在も弱磁場MRIの開発に利用されている 。(上写真)

こうした変遷を経てノウハウを蓄積してきたエヌエフの低雑音信号処理技術は2021年、アニーリング型量子コンピューターのチップ評価用装置である「量子コンピューター用低雑音信号処理システム」となって結実。超伝導素子の制御や信号検出を高精度に行うシステムで、量子コンピューター開発の研究者に注目されている。

主に信号増幅器、低ノイズ電源と任意波形発生器で構成される。任意波形発生器では、アナログ的な直線補間回路の採用により高品位の信号を発生可能だ。これにより、デジタル方式の信号源で発生しやすい高周波のEMIノイズがほとんどなく、超伝導素子の制御に最適だ。

多量子ビット化を実現するには多チャンネル化が必要。エヌエフの低雑音信号処理システムは1ユニットあたり16チャンネルを基本としながら、1024チャネルまで拡張可能だ。
このシステムを活用した国内の量子コンピューター拠点の研究では、現在、6量子ビットの量子コンピューターチップの動作を確認。

量子コンピューター用低雑音信号処理システム

また、量子ソフトウェア研究拠点「QSRH」で開発中のゲート型量子コンピューターにもエヌエフの低雑音直流電源が採用されるなど、実績を積み重ねている。

量子力学の応用領域は量子コンピューターにとどまらない。量子センシングやライフサイエンスなど量子力学の成果を展開した幅広い分野で、エヌエフの低雑音信号処理技術を活用することが期待されている。

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