2022.05.17 エア・ウォーターなど酪農地帯で水素の地産地消国内初 家畜ふん尿から取り出し

鹿追町環境保全センター内に設置された、しかおい水素ファーム

作成されたロゴマーク作成されたロゴマーク

 家畜のふんや尿から水素を製造--。産業用ガスの製造販売を手がける大手、エア・ウォーターグループが今春から、北海道の酪農地帯で国内初となる家畜のふん尿をもとに水素を製造する事業に乗り出した。大手ゼネコンの鹿島と共同で、事業会社を設立。地域の燃料電池自動車(FCV)などに供給して活用する。水素社会の進展に向け、エネルギーを地産地消する先駆的な取り組みだ。

 製造を始めたのは北海道のほぼ中央部に位置する鹿追町。同町農業振興課によると、人口は5200人ほどだが、酪農を中心に牛の畜産なども盛んだという。

 グループのエア・ウォーター北海道(札幌市中央区)と鹿島が事業会社「しかおい水素ファーム」(北海道鹿追町)を2月に設立した。エア・ウォーター北海道が51%、鹿島が49%を出資している。

 事業会社が設立されたのは、町立の施設である鹿追町環境保全センター内。センターでは、地域の酪農家らから牛のふん尿を回収し、1日最大94.8トンを処理する。エア・ウォーターによると牛1300頭分に相当する量だ。

 センターでは、ふん尿をメタン発酵させバイオガスを生成。メタンガスを抽出し、発電の燃料にしたり熱利用したりしている。そのメタンガスの一部を、エア・ウォーターの技術により、水蒸気と混ぜて高温にするなどして水素を取り出す。1時間当たり最大で水素約70立方メートルを製造可能だ。

 ふん尿由来のメタンガスは、天然ガスと比べて他のガスなどが混入しているなどして質は低いものの、水素の取り出しには影響はないという。水素を取り出す過程で二酸化炭素(CO₂)は排出されるが、大気中のCO₂が固定化された牧草などを牛が食べたことに由来するため、カーボンニュートラルと見なせるという。

 一方、「水素社会の進展に大きく関わる問題」(エア・ウォーター)なのが、水素の需要面の広がりだ。今回、製造した水素は、隣接する水素ステーションなどでFCVや燃料電池フォークリフトなどに供給販売される。鹿追町も熱心に協力し、町の公用車にFCVが導入された。また、道内にある半導体関連の工場などにも販売する計画で、地域を巻き込んだ取り組みに広げていく。

 エア・ウォーターと鹿島などは2015年から共同で、環境省から委託を受けた事業として、家畜ふん尿からの水素製造や貯蔵、利用などの実証を行ってきた縁がある。実証で「水素の持つポテンシャルを確認できた」として、共同で商用化に至った。

 PR用に作成したロゴマークは、水素が緑豊かな台地で育つ乳牛の体内から作られたことなどを表現した。エア・ウォーターは「家畜のふん尿から莫大(ばくだい)な量は製造できないが、地域の需要を賄える分くらいは製造できる。地域でエネルギーを循環できることは意義深い」としている。