2020.01.10 地熱発電開発調査に多彩な事業者が参入 JOGMECが昨年の助成事業24件公表

 国内に世界有数の資源を有している再生可能エネルギー、地熱発電について、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は、国内の民間企業や自治体、NPOなどが全国で実施する資源量調査のうち、昨年1年間に助成対象として採択した24事業を公表した。

 国などが支援策を推し進め、地熱発電を現状の3倍に増やす目標を掲げる中、新規として、大学発ベンチャーキャピタルなども初めて参入。大小多彩な顔ぶれで裾野の広がりが見え始めた。

 今回公表されたのは、地熱資源量の把握や地下構造を明らかにする調査への助成。昨年中に7回公募し、新規7件、継続17件を採択した。採択された事業の経費のうち、50~100%が支援される。

 国は15年にエネルギーミックスを掲げて目標とした長期エネルギー需給見通しでは、30年度までに地熱発電が総発電電力量の1~1.1%を占めると規定。設備容量で現状の約50万kWから、150万kWにまで増やすことを目指す。

 また、18年7月に閣議決定され、「再エネの主力電源化」が示された第5次エネルギー基本計画では、国内には世界3位の資源量があるとした上で、「安定的に発電を行うことが可能なベースロード電源を担うエネルギー源」と位置付けられた。

支援策が浸透し、飛躍の年に

 「地熱発電が、大きく飛躍した歴史的な年だったと言える」。JOGMEC地熱事業部の担当者が、そう振り返る19年には、JOGMECが提供する3つの支援制度すべてを活用して開発された岩手県八幡平市の松尾八幡平地熱発電所(出力約7500kW)が1月に本格稼働。

 さらに5月には、出力1万kW超の大型発電所となる秋田県湯沢市の山葵沢地熱発電所(出力約4万6200kW)が運転開始した。大分県九重町の滝上発電所(96年運転開始、出力2万7500kW)以来、約23年ぶりとなる。いずれも、地下から取り出した蒸気を直接タービンに送り、発電効率が高い「蒸気発電」だ。

 こうした結果には、手厚い支援策が浸透してきた背景がある。東日本大震災を受けて本格化させた再エネ振興策の一環で、国などは12年から、開発リスクの高い地熱調査に対して事業費の最大全額を助成する制度や、発電所建設などに伴う債務の上限80%を保証する制度などを始めた。

 さらに、国内の地熱資源量の8割は国立・国定公園内にあるとされ、調査や開発が難しかった。この問題に対し、環境省などが12年から段階的に規制緩和を進めて、「特別保護地区」を除いた地区で開発が可能になった。資源量で全体の7割に及ぶ。

 実際、今回採択された新規事業7件のうち、5件が国立などの公園内での調査だ。その一つ、大分県由布市の阿蘇くじゅう国立公園内では地元の林業会社「マルマタ林業」が、地質調査などを新たに始める。すでに「調査地域内で温泉を湧出させた実績もある」(同部)という。

 さらに、新規の事業者には、大学発ベンチャーキャピタルとして知られる「東京理科大学インベスト・マネジメント」も含まれる。北海道長万部町で、地質調査や電磁探査などに乗り出す計画だ。

 地熱発電には、発電後の余熱や熱水や利用した農業や観光面での地域振興なども期待されている。同町内には東京理科大キャンパスもあり、「売電のほかにも、地熱の二次利用で、地域貢献に取り組みたいという大きな狙いもある」(同)という。

 JOGMEC地熱事業部は「地熱開発はリードタイムが長く、リスクも高い。従来の石油開発会社や電力会社など以外からも、広く参入してもらうことを歓迎したい。さらなる投資を呼び込むことが、地熱開発を活性化させるためには欠かせない」と話している。