2022.12.28PR 【PR】エヌエフホールディングス 量子コンピューターの未来 第1回

エヌエフホールディングス×藤井啓祐教授

第1回(全3回)

経営、技術...その道の “匠” の理念、体験、思いを紹介する「匠が語る」。
社会課題の解決に役立つ可能性を秘めた“量子コンピューター”に携わる3人が登場。

次世代コンピューター開発の最前線を支える電子計測器メーカー
エヌエフホールディングス高橋常夫会長と、渡辺啓仁基礎技術研究センター長。
そして米グーグルの「量子超越」で査読も担当した注目の研究者:藤井啓祐教授。

第1回は、両者の量子コンピューターとの出会いから、現在の研究段階について。

高橋常夫(以下、高橋) 本日は、量子コンピューター研究のリーダーとして世界的にご活躍されている大阪大学・藤井啓祐教授をお招きしております。

日本の科学技術や産業競争力の低下が危惧される中、量子コンピューターの議論を通して、日本の将来の成長性も含めて、お話をお伺いできればと考えています。

―量子コンピューターとの出会い―

高橋 電子計測器メーカーである当社が量子コンピューターと関わることになったのは、超伝導素子を用いたジョセフソンコンピューターの研究用に、低雑音増幅器と低雑音電源の開発を依頼された1995年にさかのぼります。

この技術を基に、SQUID(超伝導量子干渉素子)を使用した脳磁場計測システム向けに多チャネル信号処理システムを開発しました。

これらの技術蓄積により、最近では量子コンピューター研究の分野で、当社の増幅器や電源が使われています。

国の研究機関をはじめ、さまざまな取り組みが加速する潮流の中にあって、当社は早くから量子コンピューターに出会い、技術を高めることができました。

高橋常夫(たかはし・つねお)
株式会社エヌエフホールディングス代表取締役会長

 藤井教授が量子コンピューターと関わることになった原点は何でしょうか。

藤井啓祐(以下、藤井) ものづくりがしたくて京都大学工学部に入学しました。量子力学の授業を受けたら、すごく不思議な世界観に衝撃を受けました。

量子力学の世界では異なった状態が同時に存在できるという「重ね合わせの原理」が基本にあります。

そういう直感的に受け入れがたくて、我々の古典的な世界観から外れた世界で動く量子を学び、今までの常識が崩れていくのを感じました。 そこから完全に量子に魅了されています。

量子コンピューターとは、重ね合わせなどを利用し、超並列計算を行うコンピューター。

従来のコンピューターは0か1かの古典ビットで情報を処理するのに対し、
量子コンピューターは、0と1の両方が同時に存在する量子ビットで情報処理を行う。
(上図:藤井啓祐教授提供)

一方で、ものづくりをしたいという気持ちもありました。

そんな時、手にした本に
「量子という、ミクロな世界を支配する不思議な物理法則を使って、情報処理を行うコンピューターを作る」と書かれているのを見つけました。
 まさに、“量子”と“ものづくり”の掛け合わせだと思い、それで量子コンピューターをやろうと。

2006年頃ですから、当時は量子ビットが一つ、二つ動いている程度で、今のようになるとは全然読めない段階でした。

自分が生きている間に実現するかわからない究極的なものを、工学的に研究することがすごく面白く感じ、この研究に没入していきました。

高橋先生の著作の中で、「りょうこ(量子)に魅せられた」とありました。
藤井はい。寝ても覚めても、「りょうこ」のことばかり考えています(笑)。

ー技術で悪夢を夢に変えるー

渡辺啓仁(以下、渡辺) 当初、私たちの事業は量子とそれほど関わりがあるとは思いませんでした。
 ところが、低雑音増幅器や低雑音電源などが量子コンピューターの研究において重要だということを知りました。

多量子ビットのコンピューターを動かすには計測器の小型化や低消費電力化が要求されます。当社の実装技術を使った小型システムで、日本の量子コンピューター研究を加速させたいと思い、より高性能な装置の開発に取り組みました。

 当社の電源を使ってNOR回路を動作させたら、よい結果が得られたことを研究者からフィードバックされた時は、すごく達成感がありましたね。

藤井 なるほど、私は理論やソフトウエアの研究をしているので、少し見える風景が異なります。

2012年に量子制御の技術でノーベル賞を受賞したセルジュ・アロシュ氏が言うには

「量子コンピューターは理論家にとっての夢だが、実験家にとっての悪夢だ」と。

 理論家は夢をどんどん膨らませますが、それを実際に作る実験家にとっては、究極的なスペックが要求されるので「悪夢」なのです。

藤井啓祐(ふじいけいすけ)
大阪大学量子情報・量子生命研究センター副センター長、理化学研究所量子コンピューター研究センターチームリーダー

高橋 渡辺基礎技術研究センター長の下では 、磁場制御や信号増幅など系全体の構成に関わるところで発生する雑音などを観測し、対策する技術の研究を進めています。

 その観測していることが、研究者には「悪夢」になるわけですね。
当社の技術者が対策に取り組んだ結果、悪夢の「悪」の部分を取り除くことができました。悪夢を夢に変えるそれが当社の役割ですね。

藤井 素晴らしいですね。技術で悪夢を夢に変える。

―量子研究の現在―

高橋 実験は、産業への貢献にどんどん近づいているように思えますが、量子の理論研究から見ると、今どこまで進んでいますか。

藤井 グーグルが量子コンピューターのハード開発に乗り出した2014年ぐらいからガラッと変わりました。

 米カリフォルニア大学サンタバーバラ校のジョン・マルティネス教授をグループごと巻き込んで研究を始めました。教授がグーグルに行く1週間前、日本で開かれた国際会議でアテンドした際、空気が変わるのを肌で感じました。

 ただそこから量子ビット数を増やしていくのはかなり大変で、基礎的な技術開発が続けられました。

 2019年グーグルが作った量子コンピューターと当時の世界最速のスーパーコンピューターを競わせた時には、そういう時代がこんなにすぐに訪れるとは思っていませんでした。

 この数年、エンジニアリングが悪夢と向き合ってからの技術の進展は大きい。

渡辺啓仁(わたなべ・ひろひと) 株式会社エヌエフホールディングス執行役員常務、基礎技術研究センター長

まだ根本的に解決していない問題はありますが、その道の人が工学的な問題として取り組めば、実はそれほど悪夢ではないことがたくさんあったと思います。

 今では実験と理論との距離はかなり近づいてきた印象です。

渡辺工学系にはプレッシャーが続いています。

 当社の電源はノイズフロアレベルが世界一低い製品です。

国産量子コンピューター開発に求められるスペックに挑戦し、量子コンピューターの実現に貢献したいと考えています。

エヌエフの多チャネル低雑音直流電圧源

〈第2回に続く〉

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