2023.01.06PR 【PR】エヌエフホールディングス 量子コンピューターの未来 第2回
エヌエフホールディングス×藤井啓祐教授
第2回(全3回)
経営、技術...その道の “匠” の理念、体験、思いを紹介する「匠が語る」。
社会課題の解決に役立つ可能性を秘めた“量子コンピューター”に携わる3人が登場。
次世代コンピューター開発の最前線を支える電子計測器メーカー
エヌエフホールディングス高橋常夫会長と、渡辺啓仁基礎技術研究センター長。
そして米グーグルの「量子超越」で査読も担当した注目の研究者:藤井啓祐教授。
今回は、量子コンピューターの取り組みを、
自動車レースの最高峰「F1」になぞらえる。
ー量子コンピューター開発は「アポロ計画」ー
藤井
量子ビット数を増やしていくと冷凍機の冷却性能には限界がありますし、配線の問題も出てきます。量子コンピューターのための究極的な技術開発がいろいろなところに求められています。
量子コンピューターを作る取り組みは、あらゆる面で究極的なスペックが求められる「アポロ計画」みたいなもの。量子コンピューターの実現を目指す中で技術開発が進むと、その技術がさまざまな分野で応用されていくと思っています。
特に計測やセンシング技術ですね。その広がりにすごく期待しています。
高橋
F1は究極的なスピードや限界を追求する「走る実験室」と言われますが、量子コンピューターもそうですか。
藤井
理論がマシン設計ですかね。エンジンを組み上げ、車を作り上げるエンジニアがすごく重要。
コンピューターを作るとなれば、電気回路、アナログ回路も必要です。いろいろな分野の知識を総動員する量子コンピューターでもエンジニアリングする人をどう育てていくかが課題だと思います。
高橋当社は精密計測の分野でF1にたとえながら、夢を追い続けたいと思っています 。
創業当時、コンピューターの黎明期にネガティブフィードバック(NF)技術を用いてフリップフロップ回路を開発しました。まだ真空管の時代です。
その技術が低雑音の計測器に応用され、今では、量子コンピューターの研究に使われている。コンピューターへの関わりが、当社の技術の原点だったと思えます。
藤井
アナログの物理世界と戦っているのが今の量子コンピューターで、「量子誤り訂正」の段階に至るまでがいばらの道のアナログ世界です。
ですから、アナログ技術が量子コンピューターにとってはすごく重要だと思います。
アナログに限らず、今日本にある技術で使える技術はたくさんあるはずです。
その分野の専門の技術者が集まることで、かなりの悪夢が解決できると思っています。理論との連携も重要です。
制御できる量子ビット数は年々増えており、各社・団体が技術を競う。
(上図:藤井啓祐教授提供)
グーグルは、54量子ビットを搭載する新量子プロセッサーで、
スーパーコンピューターの計算速度を超えたと発表。(量子超越)
高橋 純粋な理論研究と合わせて、周辺のさまざまな技術が必要となりますね。またF1レースにたとえますと、日本は今どのあたりにいますか。
藤井 ノイズの問題を根本的に解決してエラー訂正をして、大規模な問題を解くというタイムスケールで考えると、まだスタート地点に立ったくらいの感じです。
量子コンピューターが100万量子ビットといった大規模なレベルで動き出す大変革には20年くらいのタイムスケールかなと思うので、長期的な戦略として取り組まないといけません。
ー量子コンピューターの可能性ー
高橋
社会が見る「未来への夢」によって、技術のスピードは加速すると思いますが、社会は量子コンピューターにどんな期待をしているのでしょう。
藤井
量子コンピューターは、量子力学の原理で動いているコンピューターです。
量子力学とは、自然界の最も根本的普遍的な物理法則。その物理法則と全く同じルールで動くコンピューターということは、いわば宇宙の箱庭ができるようなもの。
隅々まで量子力学で制御可能なプログラムができるコンピューターは、革命的に科学技術の可能性を広げていくと思っています。
新しい世界を見る装置ができることで、今まで見えなかった物理現象や複雑な現象、例えば窒素固定や光合成のメカニズムの解明などが期待されます。地球規模の問題に貢献できると思っています。
高橋
科学技術がさまざまな問題を解決し、世の中を豊かにしていく。
科学技術の一つである量子コンピューターの研究成果がもっと広く作用すれば、世の中に夢をもたらすわけで、本当に重要で普遍的なニーズに応える技術ですね。
この研究は「社会や地球規模での貢献」という位置付けになり、各国が競うレースというよりも合同チームという感じでしょうか。当社は「量子ソフトウェア研究拠点」(QSRH)にも参画していますが、国内の連携の動きをどう見ていますか。
藤井
国内で量子技術を結集し、産学官一気通貫で取り組む拠点を形成する動きが「量子技術イノベーション拠点」で、
私は、関西唯一の拠点であり、大阪大学が主導するQSRHで課題リーダーとして活動しています。
量子コンピューターの実機を理化学研究所と協力して、阪大内に立ち上げました。
大阪大学内の量子コンピューター実機
エヌエフさんの電源など国産の技術もどんどん取り入れ、使えそうな国産技術を持つ企業にも参画してもらい、量子コンピューターの利用を推進しています。
高橋
大学での啓蒙活動も重要ですね。
藤井
阪大では全国から優秀な学生が企業の方と一緒に勉強しながら、阪大で組み上げた量子コンピューターを動かし、実際に測定してノイズの問題がいかに大変かを体験するプログラムなどを用意しています。学生と産業界をつないで、広く量子コンピューターの技術を育てていくのが目標です。
〈第3回に続く〉