2023.01.13 【放送/機器総合特集】23年 年頭所感 日本放送協会 前田晃伸会長

前田 会長

スリムで強靭なNHKに
コンテンツ価値磨く

 あけましておめでとうございます。本年もNHKの放送事業にご理解とご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 昨年は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻という、予想もしなかった出来事が起きました。

 デジタルの情報空間に出所不明で不確かな情報があふれる中で、正確で信頼できる情報を国民・視聴者にしっかりお伝えするという、公共メディア・NHKの役割がいっそう問われる一年となりました。

 こうした社会的な要請に確実に応え、激しい環境の変化に対応できる組織にするため、私は「スリムで強靭(きょうじん)な新しいNHK」に生まれ変わるという目標を掲げて、あらゆる分野での改革に取り組んでまいりました。

 一連の改革への取り組みが結実した結果として、衛星契約・地上契約ともに受信料を1割値下げするほか、一人暮らしの学生の受信料免除を拡大するなどとした中期経営計画の修正案をお示しすることができました。

 物価高が続く中、少しでも視聴者の負担軽減につながればという思いで、当初の計画策定時にお約束していた内容からさらに踏み込んだ還元策としました。いわゆる「三位一体改革」への取り組みに対し着実に成果が得られた結果、過去にない大規模な値下げを実現することができたものと考えています。

 今年は、日本のテレビ放送が開始して70年という節目の年です。本放送開始当時のテレビ受信契約数は、わずか866件だったそうです。

 その後、日本のテレビ放送は、NHKと民放の二元体制の下、カラー化やデジタル化、高精細化などさまざまな技術革新を経ながら飛躍的な成長を続け、国民的メディアとしての役割を担ってまいりました。

 国民に身近なメディアとして、まだまだ放送の社会的役割や存在感は失われることはないと確信しています。

 民放との二元体制を引き続き維持・発展させながら、放送がこれまで培ってきた社会的役割やコンテンツの価値をさらに発揮し、デジタル時代における新たな「放送の将来像」を描くことによって、視聴者・国民の期待と信頼に応えてまいります。

 伝送路が多様化したとしても、質が高く、信頼が高い公共的なコンテンツやサービスを提供して、健全な民主主義の発展に寄与し続けることは、公共メディア・NHKに課せられた変わらぬ使命です。

 私は1月24日の任期満了をもって会長を退任いたしますが、後任の稲葉延雄新会長の下、引き続きスリムで強靭なNHKに生まれ変わる改革を着実に進めるとともに、新しいNHKらしさを追求し続けて、視聴者・国民の皆さまに「NHKがあって良かった」と心から感じていただけるよう、組織を挙げて対応してまいります。