2023.05.31 【JISSO PROTEC/JPCA Show特集】電子回路基板動向 自動車など次世代ニーズに照準
電子回路基板(プリント配線板、モジュール基板)は自動車、情報通信端末、産業機器などの成長分野を中心に、技術の高度化と生産規模拡大が進展している。特に近年は、CASEをメガトレンドとした自動車の高機能化、5G通信の本格化、IoT市場の広がりなどが電子回路基板の需要を押し上げている。電子回路基板メーカーは、今後も次世代ニーズに照準を合わせた技術開発と投資戦略により、事業拡大を推進する。
日本電子回路工業会(JPCA)の生産見通しによると、日系企業の電子回路基板総生産額(国内生産+海外生産)は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた2020年を底に、21年は新型コロナからの経済回復により、前年比13.4%増の1兆4882億円と大幅増となり、4年ぶりに生産が反転。その後も回復基調が続く。
22年度の日系電子回路基板メーカーの生産は、旺盛な自動車・産機関連需要などを背景に、堅調に推移した。自動車向けは、世界的な半導体不足の長期化に伴う自動車の減産が相次いだ中でも、車の高機能化や電動化が車1台当たりのプリント配線板のポテンシャルを向上させた。22年秋口以降は民生機器や産業機器市場を中心に調整局面となったが、好調だった上期がけん引し、通期では好業績を計上した企業が多い。
23年度は、中国市場低迷の長期化や産機市場での在庫調整などにより、年度前半は低調な推移が見込まれているが、後半にかけて緩やかな回復が予想されている。
そうした中で、電子回路基板メーカー各社は将来の需要増大に対応するための投資戦略を強化しており、国内外での新工場建設や新工場棟増設などの動きを活発化させている。特に、25年頃からのBEV(バッテリーEV)市場の本格化に照準を合わせた設備投資増額の動きが進展している。
電子回路基板の技術開発では、自動車向けは、xEV化の進展により、インバーター、DC-DCコンバーター、オンボードチャージャー(OBC)、バッテリーマネジメントシステム(BMS)などの高放熱、大電流を要する基板需要が拡大しており、メタル基板、厚銅基板、銅インレイ基板、スルーホール厚付け銅めっきなどの技術が要求に応じて使用されている。
スマートフォン、モジュール、半導体パッケージ用のプリント配線板は、高密度技術が一段と進んでいる。スマホ向けのエニーレイヤー基板は、L(ライン)/S(スペース)が50マイクロメートル/50マイクロメートル以下の微細化技術を適用したエニーレイヤー基板へと高度化している。さらに、30マイクロメートル/30マイクロメートル以下の微細パターン化が可能なMSAP(モディファイド・セミ・アディティブ・プロセス)法の導入も進んでいる。
モジュール基板では、多層板の内層にICや抵抗器、コンデンサーなどの部品を埋め込み、基板表面にも部品を実装することで基板面積を小型できる部品内蔵基板技術も注目を集めている。