2025.03.10 法制事務のデジタル化でアイデア競う デジ庁のハッカソンに熱視線
ハッカソンの会場で記念撮影に臨む平デジタル相ら関係者たち=東京都港区
法令とデジタルを掛け合わせたサービスの開発をチームで競う――。そんなデジタル庁主催のハッカソンが都内で開かれ、各チームが約1か月という短期間で仕上げた28作品が集結。この中の7作品が受賞し、法令調査業務を効率化するツールが最優秀賞に輝いた。法令分野を変革する可能性を秘めた多彩なアイデアに注目が集まりそうだ。
デジ庁は画期的なアイデアやサービスの創出を促そうと、「アイデアソン・ハッカソン」を2024年11月に初めて開催した。今回の取り組みはそのシリーズの第3弾で、2月5日から実施。最終日の今月6日には、東京都港区の日本マイクロソフト品川本社で作品の動画発表や表彰式が行われた。
この中で最優秀賞を受賞したのが、高度や検索機能や生成AI(人工知能)を活用して法令調査を支援するツールで、チーム「Lawsy」が手掛けた。専門家に依存することなく法令の情報収集や解説を手助けしてくれる。例えば、「AIによる遠隔医療サポートに対する法的解釈」について質問すると、AIによる診断提案が医療行為に該当するかを探り、ポイントが整理されたレポートが自動生成される。審査員を務めた機械経営代表の安野貴博氏は「信頼できるソースをより集中的に深く調べたいというニーズは、法制でも民間の契約実務でも発生する。完成度が高く素晴らしい」と評価した上で、今後の拡張にも期待感を示した。
これに次ぐ優秀賞を受賞したのが、法令の定義規定を素早く閲覧できる機能を提供する「チームおとももち」のツールをはじめとした3作品。現行法令の課題を可視化し具体的な改正案を提示する「ガバメントイノベーターズ」の作品と、弁護士の法令検索を支援するAIサービスを提供する「NPClouder」の作品も選ばれた。残りの3作品には、「法制事務の効率化」などの部門賞が贈られた。
政府での成果活用も視野に
社会のルールや手順を厳密に記述した法令を作成する業務には、手作業や読み合わせといったアナログ作業が残っており、こうした法制事務のデジタル化が求められている。国民により分かりやすい法令データを提供するという要請もあるが、法令に関する支援ツールが不足しているのが現状だ。こうした課題を踏まえて企画したのが今回のハッカソンで、デジ庁は9000超に上る法令が登録されたサービス「e-Gov法令検索」などのシステム開発にアイデアを役立てることも視野に入れている。さらに法令データを活用した新たなビジネスやサービスを創出し、国民の利便性向上につなげることも狙う。
表彰式に登壇した平将明デジタル相は、「できるだけアイデアをデジ庁で使って、安全性を確認した上で、政府全体に広げたい」と強調。都道府県や市町村にも目を向け、「デジ庁がコアになって横展開と縦展開をすることによって、デジタルとAIの実装をスピードアップして取り組んでいきたい」とも述べた。今春には、各府省庁が自ら全事業を点検する「行政事業レビュー」にAIを応用して政策立案などに役立てようと同シリーズの第4弾を開く予定で、デジタル分野でアイデアを競う取り組みの舞台が広がりそうだ。