2025.03.10 「HDD事業に集中」 半導体メモリーを分離 ウエスタンデジタル

カリフォルニア州グレートオークスのウエスタンデジタル本社(出所:ウエスタンデジタル)

ウエスタンデジタルのアーヴィン・タンCEOウエスタンデジタルのアーヴィン・タンCEO

 米ウエスタンデジタル(WD)が、半導体メモリー事業を分離・独立させた。NAND型フラッシュメモリー事業は「サンディスクコーポレーション」として運営され、2月24日にナスダック市場に上場。WDはHDD(ハードディスクドライブ)事業に専念し、AI(人工知能)時代のデータストレージを強化する方針を打ち出している。

 WDは2016年に旧サンディスクを買収し、NAND市場に参入。日本のNAND型フラッシュメモリーメーカーであるキオクシアは、以前から提携関係にあり、四日市工場(三重県四日市市)と北上工場(岩手県北上市)で共同出資を行い、開発・製造で協業している。22年10月には四日市工場に総投資額1兆円の最先端工場「Fab7」を開設した。

 WDとキオクシアは21年から統合交渉を進めてきた。しかし、両社の統合交渉は難航し、最終的に23年に破談。キオクシアは24年12月に東証プライム市場へ単独上場した。ただ、開発・製造の協業関係は継続しており、両社は2月、4.8Gb/秒のNANDインターフェイス速度を実現する最先端3Dフラッシュメモリー技術を発表している。

 サンディスクのデービッド・ゲックラーCEO(最高経営責任者)は、メモリー事業の分離・独立について「フラッシュメモリーのイノベーターとして世界をリードしていく」と強調。WDのアーヴィン・タンCEOは、生成AIの普及拡大に伴うストレージ需要の増大を見据え、「HDD事業に集中することで、ハイパースケーラーやクラウドサービスプロバイダーとのパートナーシップもさらに強固なものにできる」と述べた。

 特にWDは、HDDの高密度化を実現する「HAMR(熱アシスト磁気記録)」の開発を進め、30年頃には80〜100TBのHDDの製造を目指している。既に2社の主要ハイパースケーラーと協力を開始しており、大容量ストレージ需要の拡大に対応する構えだ。

 今回の分離を契機に、サンディスクとキオクシアの統合案が再浮上する可能性も指摘されている。今後のメモリー市場の動向には注視が必要だ。

<執筆・構成=半導体ナビ