2025.06.07 「AI×行政」で平行革相がキーパーソンと対談 ツール実装の機運醸成へ意欲

特別対談に臨む平将明・行政改革担当相(左)と 東大大学院の松尾豊教授=東京都千代田区のデジタル庁

 「AI(人工知能)×行政」の可能性――。平将明・行政改革担当相と東京大学大学院工学系研究科の松尾豊教授はそんなテーマで特別対談を行った。松尾氏はAIの可能性を適切に広げる必要性を説いた上で、行政全体の効率化が日本経済にもたらすインパクトの大きさを強調。平氏もそうした考えに同調した上で、AIを政治の意思決定の精度向上につなげることに意欲を示した。

 内閣官房は、行政が持つデータの新たな利活用法などを学生の柔軟な発想を取り入れながら探索するイベント「行政改革学生アイデアソン・ハッカソン」を今夏に開催する予定。それに先立つキックオフイベントが6日にデジタル庁で開かれ、この中で生成AIを行政分野に生かす可能性などをテーマに両氏が対談し、熱いトークを繰り広げた。

恩恵を実感する機会づくりを

 松尾氏は「若い人は新しい技術を使う可能性に満ちている。(AIが秘める)可能性をちゃんとアンロック(制限の解除)していけば、未来がどんどん広がってくる」と力説。「AIを使えば得になる」と実感する機会を増やす必要性も説き、「感情と論理の両面から推していくことが大事だ」と語った。平氏もそうした考えに呼応し、「自動運転もドローン(無人機)もいい感じで来ていたが、アメリカや中国に置いて行かれている。レギュレーション(規制)のデザインのスピードが遅いし柔軟でない」と指摘した。

 話題は、深刻化する労働力不足にも広がった。平氏は「アナログのソリューションは『給与を上げましょう』『職場環境を良くしましょう』だが、それを個々の会社や役所がやっても(人材の)絶対数が足りないため解決しない。(仮に)定員割れしてもっと少なくなっていっても、ちゃんと回るようにすればいい。それを解決するのがデジタル化とAIだ」とも述べた。

 自民党デジタル社会推進本部のAI の進化と実装に関するプロジェクトチーム(PT)は、昨年4月に「AIホワイトペーパー2024」をまとめ、世界で最もAIに理解があり同技術の研究開発や実装が行いやすい「世界一AIフレンドリーな国」を目指すスローガンを打ち出した。PT座長を務めた平氏は、米ビッグテック(巨大IT企業)から4兆円超というデータセンターの巨額投資を呼び寄せる日本の強みを生かして、AIの実装を促す「マインド」を盛り上げる必要性も説いた。

政治の意思決定の精度向上へ

 さらに平氏は、各府省庁が5000を超える国の全ての事業を点検する「行政事業レビュー」にAIを適切に役立てる意義についても力説。「政治の意思決定の精度を上げることに使えたら面白い」と述べた。例えば、パンデミック(感染症の世界的大流行)が再来して特別に10兆円規模の予算を割くという場面で、AIに拠出方法を提案してもらい、それをベースに与野党がより精緻な議論を繰り広げるという展開が考えられるという。

 また平氏は、デジタル庁で採用したAIを水平展開する考えを示した。さらに政府が取り入れたツールを、行政機関がITサービスを迅速に調達できるよう支援する仕組み「デジタルマーケットプレイス」を通じて都道府県や市町村に展開することへの意気込みも示した。官主導でどこまでAIの実装を促すことができるか。その旗振り役を担う平氏の手腕に注目が集まりそうだ。