2022.11.07 【カーエンターテインメント特集】 市販ならではの機能強化が鮮明

車種を問わず大画面ナビが取り付けられるフローティング構造のナビも市販ならではの製品として注目(写真はパナソニック・ストラーダ)

車種を問わず大画面ナビが取り付けられるフローティング構造のナビも市販ならではの製品として注目(写真はパナソニック・ストラーダ)車種を問わず大画面ナビが取り付けられるフローティング構造のナビも市販ならではの製品として注目(写真はパナソニック・ストラーダ)

パイオニアは音声のみで操作できる新車載端末「NP1」を提案。新世代の機器として注目されるパイオニアは音声のみで操作できる新車載端末「NP1」を提案。新世代の機器として注目される

車種専用のスピーカー取り付けキットも注目(ハイエース専用のツイーター取り付けキット=カロッツェリア)車種専用のスピーカー取り付けキットも注目(ハイエース専用のツイーター取り付けキット=カロッツェリア)

 主要カーナビゲーションシステムメーカー各社は、市販カーナビをはじめとした最新の車載機器により、快適で楽しいドライブを支援する。新型コロナウイルスの感染は油断できない状況だが、行動制限のない秋の行楽シーズンを迎え、自家用車での外出も増えている。今年の市販カーナビの多くはエンターテインメント機能を大幅に強化し、より楽しいドライブを提案してきている。年末商戦を控えて各社は新製品を前面に出し、体感の場を増やしていく考えだ。

 この一年の国内の自動車販売は、世界的な半導体不足や部材不足などの影響を受けて厳しい状況が続いており、生産調整を余儀なくされている車種も多い。カーナビなどの車載機器も、部材不足の影響から製品供給ができないメーカーなどもあった。

 直近までの動きを見ても各社は、製品の設計変更やサプライチェーンの見直しを図るなど対応に追われていた。加えて原材料費の高騰などもあり、依然として厳しい環境下での生産が続いている。

 ただ、夏以降は部材不足の影響も改善されつつあり、メーカー関係者からは「製品供給のめども立ちつつある」という声が聞かれるようになってきた。主要市販カーナビ各社も新製品の発表を相次いで行っており、年末に向けて本格的に巻き返しを図っていく。

 各社の今年の市販カーナビなどのトレンドはエンターテインメントだ。これまではナビ性能と安心・安全に焦点を当てた開発が進んでいたが、この数年はナビの基本性能の向上だけでなく、市販ならではの機能強化が鮮明になってきた。

 背景には最近の新型車は電子化が進み、安心・安全を実現する機能が標準的に装備されるようになってきたことがある。さらに、従来と比べて純正のオーディオ、ナビの性能も飛躍的に高まっていること、車両との連携が進んでいることから、従来に比べてもメーカーオプションを選択する利点もある。

 一方で、メーカーオプション品は高額な上、市販品のような遊び心を持った機能は少ない。こうしたこともあり、最近の市販ナビは市販でしか味わえないエンターテインメントを重視した開発にかじを切っているところが多い。自動車メーカーはインターネットにつながり、さまざまな情報が得られるコネクテッドカーを提唱するが、市販メーカーは市販にしかできないコネクテッドに取り組む。その一つがエンターテインメントになる。

 併せて市販メーカーが注力しているのが新型車だけでなく、約6000万台の既販車になる。最近は車齢が伸びており、中古車市場も活況だ。1台の愛車を長く乗るユーザーへの提案に加え、中古車で購入したユーザーへの提案も不可欠で車種を問わず装着できるナビも注目されている。

 各社が現在注力しているのが市販製品の魅力を伝えることだ。市販製品の良さを感じているのは、若い時代にクルマにこだわってきた中高年の男性が多く、あとは一部の自動車好きの若者にとどまっている。より多くの世代にドライブの楽しさを支援する市販製品を体感してもらい、購入に結び付けていくことも課題で、実機を体験できる場づくりにも取り組む。

 今後はカー用品店店頭にデモカーを持ち込んだイベントや、ショッピングモールでの体感イベントなども進めていく計画で、年末に向けてはインターネットやSNSを使った告知、キャンペーンなども合わせて展開する。

主要メーカー各社
エンタメ機能など大幅強化

 今年の市販ナビメーカーの新製品は、エンターテインメントが大幅に強化されただけでなく、新型車、既販車問わずにドライブを安全に楽しめる機能や製品が充実している。

 パイオニアは、車内Wi-Fiをいち早く提唱し、自宅でもドライブ中でもインターネットコンテンツを自由に楽しめるようにした。幅広い製品群も特徴で、上位のカロッツェリア・サイバーナビからディスプレーオーディオまで、世代や需要に応じた製品を選べるようにした。車種専用のスピーカー取り付けキットも発売し、音質も含めた車内エンタメ空間を演出する。

 今年発売した、音声のみで対話しながら操作するナビ、ドライブレコーダー、Wi-Fiを一体化した新車載端末「NP1」も新世代の機器として注目。認知拡大に向けて体感の機会を増やそうとしている。

 パナソニックオートモーティブシステムズは、車種を問わず大画面ナビが装着できるストラーダF1シリーズの2022年モデルで、エンターテインメント機能を大幅に強化した。業界に先駆けて画面が浮き出るフローティングディスプレーを採用したり、大画面有機ELディスプレーを採用した。

 今年は自宅のレコーダーとネット接続し、車内でも録画番組などをより簡単に楽しめるようにした。リビングと車内をつなぎ、これまでドライブ中に体験できなかったエンターテインメントを支援していく考えだ。市販製品にしかない機能で新たな顧客層の獲得を目指す。

 JVCケンウッドは、ケンウッド彩速ナビで、高画質とエンターテインメントを訴求する。9V型のフローティングナビをはじめオーディオ機器、ドライブレコーダーなど幅広い製品群を用意。新製品はアンドロイドスマートフォンをワイヤレスでナビと接続し、コンテンツが楽しめるワイヤレスミラーリングに対応した。

 いち早く車種専用の大画面ナビ「ビッグX」シリーズを企画開発し、展開してきたアルプスアルパインは、ナビ、大画面ディスプレーオーディオ、デジタルルームミラーなどを展開。オーディオをはじめリアモニターなど周辺機器も充実しており、クルマ全体の安全とエンターテインメント化を提案していく考えだ。