2024.01.15 【電子材料特集】各社の事業展開 信越化学工業

8インチGaN on QST基板

高品質なQST基板を供給
GaNパワーデバイス用に力

 信越化学工業は、QST基板をGaN(窒化ガリウム)パワーデバイスの社会実装に不可欠な材料と見定め、開発と製品上市を推進する。

 QST基板はGaNと熱膨張係数が同等のため、エピタキシャル層の反りやクラックを抑制でき、大口径で高品質な厚膜GaNエピタキシャル成長が可能な基板材料。この特長からパワーデバイス、RFデバイス(5G/Beyond 5G)や、マイクロLEDディスプレー用微小LED成長基板などへの適用が期待されている。

 同社は、QST基板販売に加え、顧客の要望に応じてGaNを成長したエピタキシャル基板販売も行う。口径は6/8インチをラインアップし、12インチ化にも取り組んでいる。

 2021年以降、国内外の顧客でサンプル評価やデバイス開発が進展。特にパワーデバイス向けは、650~1800Vの広範な領域で評価が進んでいる。

 同社はQST基板の改善を重ねてきた。具体例としては、貼り合わせプロセスに由来する欠陥を大幅に改善し、高品質なQST基板供給を可能とした。GaN成長の厚膜化では、最適なバッファー層を成長させたテンプレート基板の提供を進めてきた。

 その結果、現在は安定して10マイクロメートルを超えるエピ成長を実現。さらに、QST基板を用いた20マイクロメートル超の厚膜GaN成長やパワーデバイスでの1800Vブレイクダウン耐圧など、さまざまな成果が生まれている。

 さらに、OKIと共同で、Crystal Film Bonding(CFB)でQST基板からGaNを剝離し、異種材料基板へ接合する技術開発に成功した。

 これまでGaNパワーデバイスは横型が主流だったが、CFB技術は、厚膜に形成された高品質GaNを絶縁性のGST基板から剝離することで、大電流を制御できる縦型パワーデバイスが実現する。

 GaNデバイスを製造する顧客に、信越化学がQST基板またはエピタキシャル基板を提供し、OKIがパートナーリングやライセンスによりCFB技術を提供する。これらの開発成果と引き合いを踏まえ、生産増強を継続する。