2025.03.11 【ミリ波】震災から14年

 岩手県出身の作家、柚月裕子さんの新刊「逃亡者は北へ向かう」(新潮社)を読んだ。不慮の事態で人をあやめた青年を東日本大震災の混乱の中で追う刑事のクライムサスペンスだ▼震災とサスペンスがどう結び付くのか最初はピンとこなかったが、津波の恐怖や不明者を探す家族の苦しみ、避難所や安置所の様子など当時の被災地の姿がつぶさに描写されている。何より作者の柚月さんも震災で家族を失っている▼「立場は違ってもみなつらい経験をしていて、そこから立ち上がろうとする姿を書か...  (つづく)