2025.05.10 「AI×ものづくり力」の高専DCON 豊田高専が最優秀賞 評価額は7億円

高専DCON2025で最優秀賞に輝いた豊田高専のチーム=10日、東京都渋谷区

「DCON2025」の本選でプレゼンする豊田高専のチーム=東京都渋谷区「DCON2025」の本選でプレゼンする豊田高専のチーム=東京都渋谷区

 高等専門学校生が培ったものづくりの技術とAI(人工知能)分野のディープラーニング(深層学習)を活用した事業プランを競うコンテスト「第6回全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト(高専DCON)2025)」の本選が10日に東京都内で開かれ、最優秀賞には豊田工業高等専門学校(愛知県豊田市)のチームが選ばれた。企業評価額は7億円で、チームには起業資金として100万円が授与された。

 最優秀賞に輝いたのは、介護士の事務作業を音声入力で自動化するAIサービスを手掛ける豊田高専のチーム「NAGARA」だ。本選で紹介したのは、腕にウェアラブル端末を装着した介護士が高齢者と会話するだけで、リアルタイムで文字起こしを行い記録に反映してくれるサービス。介護業界の現場で深刻化する人手不足の解消に貢献したいという思いをプレゼンテーションで熱弁した結果、圧倒的な現場感がある事業プランの社会的な意義が高く評価された。

 同チーム代表の岡田一輝氏は大会後に報道陣の取材に応じ、「チーム全員がものすごい行動量で駆け抜けてきたことが勝因だ」と喜びをかみしめた。さらに「介護士さんがやりたいことに専念して、人と人のつながりを最大にするというミッションとビジョンを叶えたい」と述べた上、将来的に「影響力のある会社」に育てることに意欲を示した。

養殖支援や子どもの見守りも受賞

 2位には、のり養殖をカモ類による食害から守るシステムを手掛けた鳥羽商船高専(三重県鳥羽市)のチーム「ezaki-lab」が選ばれ、評価額は1億5000万円だった。このシステムは、AIでカモを検出して危険を伝える鳴き声で警戒させレーザー照射で追い払うという仕組みで、経済産業大臣賞も受賞した。3位は、富山高専本郷キャンパス( 富山市本郷町)のチーム「Wider」が、AIカメラで子どもの状況を監視し危険を検知するとスマホに通知してくれるシステムで受賞。評価額が8000万円だった。

 今回の大会は、日本ディープラーニング協会や全国高等専門学校連合会、NHKなどが主催。昨年度の1.3倍となる95チーム42高専がエントリーし、2度の予備審査を勝ち抜いた10チームがこの日の本選に出場。プランと作品に磨きをかけた各チームが、会場で熱いプレゼンを繰り広げた。

 DCON実行委員長で東京大学大学院教授の松尾豊氏は最後のあいさつで、「毎年(高専DCONの)レベルがどんどん上がっており、質の高いプレゼンテーションが行われた。加えて、技術力の高さとビジネスの構想の練り込みが組み合わさり、非常に素晴らしい発表だった」と総評。続けて、政府が重視する「地域創生」で高専発スタートアップが果たす役割の重要性も強調した。

 松尾氏は大会後の取材でも、全国各地で活躍する可能性を秘める高専発スタートアップの使命に触れ、「高専発のスタートアップを地方で生み出し、それが地方企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)やAI化を進めていく。さらには上場して、地域経済にいい効果をもたらしてほしい」と期待感を示した。