2025.06.14 「ガバメントAI」を基盤に行政サービスを高度化 デジタル庁主導で構築へ

デジタル行財政改革会議で発言する石破茂首相(左から2人目) 出典:首相官邸のホームページより

 デジタル庁は、中央省庁や自治体が行政サービスの効率化と高度化に向けて人工知能(AI)を利活用できるよう環境づくりに乗り出す。「ガバメントAI(仮称)」という政府のAI基盤をクラウド上に構築する方針で、政府が13日に閣議決定した「デジタル社会の実現に向けた重点計画」に盛り込んだ。さらにAI利活用に役立つ政府保有データの整備や普及にも取り組み、社会全体のデジタル化を促すことを目指す。

 政府は、日本が目指すデジタル社会の姿や施策を示した重点計画を改定し、同日に公表した。2021年に決定した最初の計画で掲げた社会像を引き続き追求するとした上で、取り組みの方向性を明示。制度・業務・システムという三位一体の取り組みを推進し、「デジタル化のメリットを実感できる分野を着実に増やしていく」と記した。日本が直面する課題やAIが実装段階に入るといった情勢変化を踏まえ、5つの重点政策を示した格好だ。

 1つが「AI・デジタル技術などのテクノロジーの徹底活用による社会全体のデジタル化の推進」。今通常国会で成立した「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」(AI新法)に基づき、AIの社会での活用に向けた政府の体制整備を円滑に実施するとともに、政府が率先して安全・安心なAI活用を進めると明記した。そこで掲げた具体策が、ガバメントAI。同庁がその開発を担い、25年度から26年度にかけて構築作業を進めていく。

 同庁は5月、各府省庁が生成AIの調達や利活用に取り組む際のルールを定めるガイドラインを策定した。政府の業務への生成AIの導入とリスク管理を表裏一体で促すことが狙い。重点計画によると、ガイドラインに基づいて、AI推進とガバナンスの両面で司令塔を担う「AI 統括責任者(CAIO)」を各府省庁へ設置。さらに、首相を議長としたデジタル社会推進会議に「先進的 AI 利活用アドバイザリーボード」を設け、ガイドライン見直しや政府で効果的にAIを利活用するための議論を行う計画だ。

地方創生やデータ活用も促す

 また政府は、同日に首相官邸で新しい地方経済・生活環境創生本部の会合を開き、石破茂政権が掲げる看板政策「地方創生2.0」の今後10年間を見据えた方向性を示す基本構想を取りまとめた。今回の重点計画はこうした流れも踏まえ、デジタルを活用した地方創生を進める際に必要となるツール「デジタル公共財」を複数自治体で共同利用するなど、デジタルや新技術の徹底活用を促す方針を示した。

 政府は同日に官邸でデジタル行財政改革会議も開き、「デジタル行財政改革取りまとめ2025」と「データ利活用制度の在り方に関する基本方針」を決定。これを機に、デジタルによる社会変革を加速する方向性を打ち出した。変革に向けた施策の1つが、データとAIが好循環する「データ駆動社会」の構築で、石破首相は「AI活用にも資する円滑なデータ連携に必要となる法制度について検討を進めていく」と表明した。重点計画でもデジタル行財政改革に触れ、データとAIの好循環づくりに向けて必要な法制度の検討を進める方針を示した。