2026.03.30 【日本航空電子工業】修理性と耐久性を両立、USB Type-Cコネクタ開発 ESPR対応のリペアラブル設計で環境規制に対応
USB Type-C準拠「DX07シリーズ」リペアラブルタイプ
背景
近年、地球規模の環境問題が深刻化しており、温暖化対策や資源保全、廃棄物削減が国際的な課題である。持続可能な社会の実現には、製品のライフサイクル全体での環境負荷低減が重要である。特に製造業ではエコデザインが規制や市場の要求として強化されており、その代表例が2024年7月にEUで施行されたESPR(持続可能な製品のエコデザイン規則)である。ESPRでは電子機器を含むほぼ全ての物理的製品に対し、修理性・耐久性・再利用性・リサイクル性を高める設計が義務付けられており、企業には製品開発や設計段階から環境負荷低減を意識した対応が求められている。
また、フランスが導入した「Repairability Index(修理可能性指数)」では製品の修理しやすさを評価・表示し、消費者の選択や製造側の環境配慮設計を促している。ノートパソコンなどの電子機器では、「技術文書の提供」「分解の容易さ」「必要工具の種類」「部品の入手性・価格」「製品固有の修理性評価」の五つの基準を満たし、10点満点で評価される仕組みが注目を集めている。こうした国際的な規制や市場環境の変化に対応し、日本航空電子工業株式会社(JAE)はUSB Type-Cコネクタの製品ラインアップで、耐久性と修理性を強化したリペアラブルタイプを新たに開発・発売した。
本稿では、本リペアラブルUSB Type-Cレセプタクルコネクタ「DX07B024ZJ1」「DX07B048ZJ1」の製品概要や特長、適用分野、そして将来の持続可能な社会構築の意義について詳述する。
製品概要
新製品はUSB Type-Cの最新仕様であるCable and Connector Specification Release 2.4に準拠し、USB4 Version 2.0規格(最大80Gbps)への対応を実現している。最大240W(5A/48V)のUSB PD EPR給電に対応した24芯タイプ(型式:DX07B024ZJ1)と、同規格に準拠するの24芯x2ポートタイプ(型式:DX07B048ZJ1)をラインアップにそろえた(図1参照)。これにより、高性能な高速伝送と大容量給電を可能としつつ、環境規制に適合した修理性の高さを最大の特長としている。

主要特徴
1 はんだ工程を不要とするサステナブル接続技術
従来のコネクタ実装では、はんだ付けが一般的に用いられているが、本製品ではコンプレッションコンタクト技術を採用し、基板上の金めっきパッドと接触させる方式を採用することで、はんだ付け工程を不要とした。これにより、製造段階および修理・再利用時における環境負荷を大幅に軽減している。はんだに伴う鉛やフラックスの使用リスクを低減し、クリーンな製造プロセスの実現に寄与するだけでなく、製造や保守工数の削減にもつながっている。(図2)

2 優れた修理性
本製品は、はんだレス化を実現するために基板との接続をばね接触(コンプレッション)構造としている。また、組み付けの簡易化を図るため、コネクタとブラケットで基板を挟み込み、ねじ止めにて確実に固定する構造である。さらに、基板にスリット付きのボス部をはめ込むことで、ねじ止めまでの間は保持できる設計とした。加えて、本製品は組み付け/分解・交換をドライバー一本で完了できる簡便な構造を採用しているため、現場の修理作業の効率化を実現している。専用工具を必要とせず迅速なメンテナンスが可能であることから、ダウンタイムの短縮およびメンテナンスコストの抑制に寄与するとともに、製品のライフサイクル延長にも大きく貢献している。(図3)

3 高耐久・高耐衝撃性
シェル(外殻部品)には、従来プレス加工部品を採用していたが、MIM※技術を採用することで、高い耐衝撃性と優れた機械的強度を実現している。特に、4軸方向からの力に対する耐性、押し込み強度は、従来のプレスシェルの値に対し4倍以上(当社比)の実力を有し、構造の堅ろう性を大幅に向上させている。(図4)
※ MIM(Metal Injection Molding)は、金属粉末を 樹脂バインダー と混ぜて射出成形し、その後バインダー除去と焼結を行って高密度の金属部品を作る加工方法。

4 高速伝送対応
USB2.0とUSB4の各規格での信号特性の違いに対応するため、端子ばね構造の設計を最適化した。USB2.0対応部では、SI特性の要求が比較的緩やかであるため、ばね部の端子形状およびモールド設計を最適化し、機械的強度や絶縁性を確保している。具体的には、ばね端子の形状を工夫することで耐久性を向上させるとともに、絶縁材の配置と形状により電気的絶縁性能を維持しつつ、信号特性への影響を最小限に抑えている。さらに、USB4用の高速伝送端子は上下段の端子において、信号線の特性インピーダンスを均一化し、クロストークおよび反射の低減を実現するために形状パターンを区別している(特許申請中)。また、ばね部の上下端子間にはミッドプレートを配置し、端子変位後にミッドプレートが端子間の中央付近に位置するよう設計することでクロストークの低減効果を得ている。(図5)

適用領域
パソコンやタブレット端末にとどまらず、医療・計測機器、産業用機械、家電製品、さらにはモビリティー分野など、多様な分野での応用が期待される。本技術は、製品の分解・再設定を伴う定期保守が必要な環境や、限られた作業空間での効率的なメンテナンスが求められる現場で、高い有用性を発揮する。これにより、IT機器から産業機器に至るまで、幅広いユーザーの課題解決に貢献することが可能である。
まとめ
ESPRをはじめとする新たな環境規制のもとで、修理可能な設計は製品価値の重要な要素となっている。JAEのリペアラブルUSB Type-Cコネクタは、工具のアクセス性向上と、応力を分散する高耐久接点を組み合わせることで、分解のしやすさと信頼性をバランス良く両立した。これにより、電子機器のサステナビリティーを支え、製品寿命の延長による廃棄物削減やライフサイクルアセスメント(LCA)の改善に貢献している。今後もJAEは、環境配慮型設計技術の深化を図り、部品段階から持続可能な製品づくりを推進していく。〈筆者=日本航空電子工業〉










