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「技術力」「グローバルネットワーク」「幅広い事業領域」を強みに飛躍
菱電商事は1947年に創立以来、今年4月22日に75周年を迎える。
エレクトロニクス商社として常に新しい事業に挑戦し続け、現在はFAシステム、冷熱システム、ビルシステム、エレクトロニクスの4基幹事業にICT技術を融合した幅広い事業領域でグローバル企業へと成長を目指している。
「75周年を機に、思い新たに企業価値を高め、100年、さらにその先も成長し続ける企業でありたい」と思いを語る正垣信雄社長に聞いた。
『失敗を恐れず新しい事業に挑戦する社風』
――75周年おめでとうございます。現在の心境はいかがでしょうか。
正垣社長 当社の75年の歴史を振り返ると、黎明期の最初の四半世紀は戦後の復興期でもあり、また、家電品販売業務を各地の商品販売会社に譲渡したことで、社員が4割減るなど厳しい時代でした。
次の四半世紀は、半導体デバイスを成長エンジンとして事業も一気に拡大した成長期になりました。直近の四半世紀はバブル崩壊など社会や経済が様々急激に変化する中で、当社の事業環境も大きく変わりました。
75周年を迎えられたのは創業以来の失敗を恐れず新しい事業に挑戦する社風と、当社の事業を支えていただいた仕入れ先やお客様のおかげと感謝しています。
――「RYODEN」の強みはどこにあるのでしょうか。
正垣社長 大きくは4基幹事業を中心とした技術力、グローバルネットワーク、幅広い事業領域だと思います。もちろん事業基盤として三菱電機のFA・冷熱・ビル・半導体の総合代理店であること、お客様の要望に合わせた幅広いデバイスを取り扱い、現場密着でソリューションを提供していることが強みになっています。
技術力ではサプライヤーが保有する技術に、ソフトウエアを組み込むなど、システムとして提案できる技術要員を社内に有しています。例えば画像処理ではシミュレーション画像解析や、センシング、温度管理、AI技術など当社独自の技術を提供することができます。
『国内は29拠点、海外19拠点』
――グローバルネットワークについて聞かせてください。
正垣社長 現在、国内は29拠点を構え、地域密着の事業を行っています。
海外は1990年にシンガポールに現地法人を設立以来、次々と拠点を開設し、現在は東アジア9拠点、東南アジア4拠点、北米4拠点、メキシコ1拠点、欧州1拠点の合計19拠点を設けています。
北米ではサンノゼとアトランタの拠点で新商材の発掘、半導体製品の輸出入を行うとともに先端情報を各国に発信しています。
インディアナポリスではオートモーティブ向けのソリューションビジネスを推進しています。ドイツ・フランクフルトの拠点では半導体その他デバイスの輸出入に加えて法規制などの情報を各国に提供しています。
海外の拠点が情報を共有することで、新たなビジネスの創出にもつながっています。
例えば毎年1月に米・ラスベガスで開かれる「CES」でも現地の社員が中心となって視察し、その最先端の情報を世界の各拠点で共有しています。
『自社植物工場22年中稼働』
――強みの一つである「幅広い事業領域」について教えてください。
正垣社長 4つの基幹事業で培った技術にICT技術を融合しモビリティ、コミュニケーションネットワーク、セキュリティ、ビデオ、ロケーション、エナジーの6つのマネージメントサービスプラットフォームを構築し、さらにスマートアグリ、ヘルスケア事業も展開しています。
例えば、ビデオでは製造現場、工場・物流などに向けたビジネスカメラソリューション「FlaRevo(フラレボ)」の事業拡大に取り組んでいます。ネットワークカメラによる一元管理・監視の見える化で予知保全を実現し、製造・物流現場の生産性と作業精度を改善します。
コミュニケーションネットワークでは電気通信事業者として認可を受け、LPWAの通信技術を活用して、産業分野でIoTの事業化を進めており、実証実験にも参加しています。その一環でルネサスやセムテック(本社=米国)とも協業を始めました。
スマートアグリでは、ファームシップ社(東京都中央区)と合弁で自社の植物工場を建設して22年中に稼働します。植物工場の運営を通じて新たな環境制御技術(Remces)を開発し、カーボンニュートラル貢献を目指し一般展開を始めました。
ヘルスケア事業では、3D化やAIを活用した画像データ管理から運用支援システムまで、幅広くソリューションを提供します。
――中期経営計画「ICHIGAN 2024」の進捗はいかがですか。
正垣社長 現在進行中の中期経営計画は売上高の目標は掲げませんが営業利益には拘り、商社の枠を超えた事業創出会社として新たな価値の創造に全社挙げて取り組んでいるところです。残りの期間は、これまで創出してきたビジネスをより具体化し、収益に結びつける期間と位置付けています。その延長線上に次期中期経営計画があります。
――これからの成長に向けた思いを聞かせてください。
正垣社長 失敗を恐れないチャレンジングな精神で、人々が安心安全に生活できる環境づくりに貢献するため「医・食・住」の分野の新たな事業の開拓と深耕に取り組みます。
また、カーボンニュートラルにも貢献したい。当社自体のCO2削減もありますが、様々な企業がカーボンニュートラルの実現に向けて取り組み始めた中で、Remcesをはじめとして当社の新たなビジネスチャンスも生まれています。そのチャンスを掴むことがこれからの重要な課題になると考えています。