2021.11.02 東北電力、火力跡地、風力特化の人材育成に発電所メンテ、訓練施設を開設
トレーニングセンターが設置される秋田火力発電所
東北電力は、風力発電設備に特化したメンテナンス技術者の育成を行う施設を開設する。今後、再生可能エネルギー拡大の一翼を担う風力発電の保守点検ニーズが急激に高まると見て、2022年10月から育成を始める。こうした施設は電力会社では初とみられる。将来的には一般からの希望者も受け入れ、「風力の技術者育成の拠点」を目指す。
風力発電設備トレーニングセンター(仮称)は、秋田火力発電所(秋田市)構内に開設する。グループでも再エネ電源が増える中、再エネのメンテナンス業務に専業する東北電力リニューアブルエナジー・サービス(仙台市青葉区)を今年4月に設立しており、トレーニングセンターは同社の施設とする。
廃止する火力構内に
同発電所では、老朽化などを理由に4基あった発電機のうち03年12月に1号機、19年9月に3号機、20年3月に2号機を段階的に廃止。23年3月には4号機を止めて発電機能を停止する。残った設備などを有効活用する形で、センターを運営していく計画だ。
22年4月から訓練用の風車などを研修機材として搬入。当面は陸上風力発電所向けの保守点検業務の訓練を進める。風車は、ブレード(羽)が集まり発電機が入った装置、ナセル部分に主要機器が収納されている。この機器を解体した上で、センターで点検、修繕などの訓練を繰り返す。
高さ100メートルを超す風車もあり、高所で作業に従事することが多い。そのため、訓練では高さ約10メートルの足場を組んで、実際に高所での作業体験を重ねるなどして実務を習得していく。
東北地方では日本海側などが風力発電の適地とされる。グループは30年以降のできるだけ早期に、東北6県および新潟県を中心に、風力を主軸として再エネ200万kWの開発を目標に掲げている。風力発電は既に青森県つがる市で稼働させているほか、運営会社への出資などにより陸上13カ所、洋上5カ所で開発を進める。
東北電力リニューアブルエネジー・サービスは、グループ外のメンテナンス業務も請け負うため、同社社員や関連企業の作業員らをセンターで育成した上で派遣していくという。
高まる人材育成ニーズ
研修は数カ月単位で実施し、年間40人程度を育成する予定だ。だが、「今後、メンテナンス業務に携わる人材育成ニーズがさらに高まっていく」(東北電力)ことを想定。将来的には希望する外部の受講者を受け入れて育成し、国内各地に広がる風力発電設備のメンテナンスができる技術者を供給する構想もある。
さらに、今後需要が増すのが、海に囲まれた日本での再エネ拡大の「切り札」とされる洋上風力発電だ。海上に風車を設置し、設備も大型化する。東北地方では秋田県沖の3カ所の海域が、国が開発を認める促進区域に指定されており、東北電力はいずれの海域でも大林組やレノバなどと計画を進めている。
海上での作業は陸上と異なることも多く、海を想定したプールなどを新設して落下時の訓練なども必要になる。また、「トレーナーの育成などに時間を要する」(同社)という。こうした対応を進め、洋上風力向けの訓練メニューも段階的に展開、充実させていく方針だ。
東北電力リニューアブルエナジー・サービスの小川善広社長は「秋田では、メンテナンスのニーズへの対応と、秋田火力発電所という資産の有効活用が両立できる。着実に準備を進めていきたい」と話している。