2022.07.01 【家電総合特集】テレビテレビ離れの若者取り込みへ画質・音質の良さ訴求

後半戦に向け大画面高画質を前面に出し買い替えを促していく後半戦に向け大画面高画質を前面に出し買い替えを促していく

 国内のテレビ市場は、高精細4Kテレビを中心とした買い替え需要の確実な刈り取りと、テレビ離れがささやかれる若者層の取り込みがカギになる。主要テレビメーカー各社は夏のボーナス商戦を前に、最新テレビの投入を本格的に始めた。コロナ禍も3年目に入り、外出自粛に伴う〝巣ごもり需要〟も一息ついている中、テレビの買い替えや新規需要を取り込むためにいま一度画質や音質の良さを伝えていく工夫が求められそうだ。

 国内テレビの出荷台数は2021年に538万7000台(前年比0.7%減)となった。11年のアナログ放送停波、エコポイント終了に伴う特需の反動減からようやく回復し出したのが18年で、高精細4Kテレビを中心に市場をけん引してきた。

 20年は巣ごもり需要も後押しし、4Kテレビだけでなく寝室や子供部屋への買い増しがありハイビジョン(2K)テレビも伸びた。10万円の特別定額給付金の支給も追い風になったが、21年後半からはその反動もあり、国内テレビ市場は前年割れが続いている。

 11年までの特需によって08年以降の3年間で5年分のテレビを販売し、その後は反動が続いていた。

 15年以降は本格的に4Kテレビが普及し始め、この数年は金額構成比では7割から8割になるまで拡大(いずれも電子情報技術産業協会=JEITA)。特需の際に購入したテレビの買い替え時期に入っていることも追い風になっていた。

 薄型テレビが出始めたころは、テレビの寿命はブラウン管テレビよりも短く5~8年程度とみていたが、実際は10年以上壊れないテレビが多く、直近の内閣府の消費動向調査では買い替え年数が10・4年となり、年々伸びている。これらをみてもメーカーや小売り各社で当初想定していた買い替えが進みにくくなっていることが明白だ。

 あるメーカー関係者は「テレビが想定以上に壊れないので、買い替えのきっかけが生まれにくくなっている」と嘆く。以前は年間で600万台から700万台が国内テレビ市場規模とみる動きもあったが、最近は国内5500万世帯が10年に1度テレビを買い替える計算で年間550万台という試算をする企業もある。

 ただ、JEITAが発表している薄型テレビの出荷見通しでは、この先は微減が続き24年に500万台を割る予測だ。これまで市場をけん引してきた高精細4Kテレビも国内は300万台から330万台前後になり、減少していくとみる。

 この先の市場をいかに反転させるかは、テレビメーカーや流通側の販促施策などでも左右してくる。

ネット動画など大画面で楽しめる

 昨今のテレビ市場は、地上波などでの優良コンテンツの不足などにより若者層を中心にテレビ離れが進んでいることも問題視している。一方で、YouTubeなどの動画配信サイトや、さまざまなインターネット動画配信などの視聴時間が増えていることから、映像コンテンツの視聴機会は減っていない。

 多くがスマートフォンやタブレットなどのモバイル端末での視聴になっているため、テレビの購買動機までたどり着かないという問題にも直面しているのだ。

 そこでテレビ各社が打ち出しているのが、あらゆる映像コンテンツを高画質で再現する技術だ。テレビ放送だけでなく、インターネット動画や動画配信サイトの動画さえも高画質化し大画面で楽しめるようにしてきた。地上波などのテレビがきれいに映ることが大前提だが、それ以上に視聴時間が増えているコンテンツの高画質化にも力を入れることで幅広い視聴ニーズを捉えようとしている。

 各社は人工知能(AI)を駆使し、あらゆる映像解析を行ったデータを蓄積し瞬時に照合することで、映している映像や視聴シーンに合わせて画質を最適化。地上波を楽しみたい人、映画を楽しみたい人、スポーツを楽しみたい人、ネット動画を楽しみたい人など、多様化する視聴ニーズに応えられる製品を増やしてきている。特に各社とも今年のフラッグシップモデル(最上位機)は画質面をさらに強化してきた。

 TVS REGZAによるとインターネットでの動画視聴が同社ネット接続状況から1日90分まで増えているという。ネット動画を大画面テレビで視聴する人も出てきていることから、今後は、大画面で楽しむ多様なコンテンツを店頭で訴求することも需要の喚起には欠かせないだろう。

 今年は音質面も大きく進化している。これまでホームシアターシステムでしか実現できなかった立体音響をテレビで実現できる製品も増えてきた。立体音響規格の「ドルビーアトモス」などへの対応も進み、主要各社の最上位モデルは天井向きに音を出せるスピーカーを装備するものもある。各社がデジタル技術を駆使し、仮想的に立体音響を楽しめる工夫もしている。大画面で迫力のある音が楽しめることも訴求ポイントになってきている。

各社、高画質化で映像づくりに特色

 主要テレビメーカーの22年モデルは画質に一層磨きをかけてきた。有機ELテレビは、パネルの開発から独自に進めるところが増えている。パネル設計から関わることで各社の映像づくりに特色が出てきている。AIを使った映像処理でも各社が独自にチューニングを施してきた。今年は有機ELでもより明るい映像が再現できるようになっている。

 各社の高画質化の動きをみると、パナソニックは独自設計で組み立ても自社で行う高輝度有機ELパネルと新開発のパネル制御を組み合わせ、より明るく鮮やかな色を再現できるようにした。

 シャープは4K有機ELと4K液晶の全機種に新開発のAIプロセッサーを採用。番組ごとに最適化した高画質映像を実現した。

 TVS REGZAは独自の有機EL新世代パネルを採用したほか、液晶ではレグザ初となるミニLED広色域量子ドットパネルを採用。いずれも新高画質映像処理エンジンで最高画質を実現している。

 ソニーは人間の脳のように処理をする認知特性プロセッサーと新開発の有機ELパネルで明るく自然な映像再現を実現。

 LGエレクトロニクス・ジャパンは、有機ELの最上位機は新パネルとAI対応の最新映像処理エンジンによりLG史上最高画質になったとしている。