2023.01.01 【AV総合特集】’23展望 オーディオ
良い音への関心は高くリアルの試聴会はにぎわいをみせている(写真はインターナショナルオーディオショウ)
高音質な音源を身近に
手軽に楽しめるサービス推進
2023年のオーディオ市場はさまざまな音源を高音質で楽しむための提案を強化していくことが成長のカギになりそうだ。デジタルからアナログまで音源が多様化するとともに音楽を聴くシーンも広がりをみせる中で、オーディオメーカー各社は音源に合わせ高音質が楽しめる製品開発を進めている。国内ではHi-Fiオーディオを楽しむ世代が高齢化する傾向にあるが、年齢や世代を問わずより良い音を聴きたいという潜在需要は多い。良い音を聴くきっかけづくりをいかにしていくか―。今年の重点テーマになる。
20~21年は新型コロナウイルスの感染拡大による〝巣ごもり〟需要で、自宅で楽しめるオーディオ機器への関心が高まった。電子情報技術産業協会(JEITA)の出荷統計によると国内のオーディオ関連機器は減少傾向が続いているものの、スピーカーやシステムオーディオなどは底堅い需要を示す製品分野もある。オーディオは趣味嗜好(しこう)の世界でもあるため、良い音に触れる機会をつくることが重要だ。今聞いている音で良いと思わせない仕掛けづくりが必要になってくる。
昨年からは行動規制が解除され、演奏会やライブなども開催されるようになってきた。実際に多くの人が会場に出向き音楽を聴いている。オーディオメーカー各社はライブ会場などに特設ブースを設けてオーディオの提案をするなどの活動を再開してきた。さらに3年ぶりにOTOTENがリアル開催され、幅広い年代の来場者でにぎわった。この動きをみても良い音を聴くことに関心のある人は少なくないため、購買の動機付けがカギになってくる。
AV機器の世界に入るには良い音を聴きステップアップさせる環境を整えることが重要だ。最近の若者層は、音楽をインターネット経由でダウンロードして聴いたり、ストリーミング配信を聴いたりしている。スマートフォンで音楽を聴くスタイルが当たり前になっている。加えてCDよりも高音質なハイレゾリューション(ハイレゾ)音源が拡大しており、手軽に高音質な音源を楽しめる環境はできている。
ハイレゾの前もスーパーオーディオCD(SACD)やDVDオーディオ、ブルーレイオーディオなど記録容量を増やしたディスクに高音質な音源を記録して提案する動きがあったが、一部のHi-Fiオーディオ愛好家の間で流通するにとどまった。
ハイレゾ音源はSACDやブルーレイオーディオと同様に、データを圧縮していたCDなどと違い音質に深みや厚み、奥行きが生まれ、より自然に近い音が手軽に楽しめるためオーディオ業界ではオーディオ市場の拡大に大きな期待を寄せていた。
さらにこの流れとともに注目されるようになったのがアナログレコードだろう。レコードは原音を記録しているため、CDとは違い原音に忠実な音の再現ができる。一部のオーディオ愛好家はデジタル時代でもアナログレコードを愛し楽しんでいた人が多かったが、ハイレゾの普及でアナログレコードが再び注目され14年以降はアナログレコードの生産が右肩上がりに伸びた。
しかしこの数年の動きをみると、依然としてスマートフォンで音楽を聴いたり、付属のヘッドホンを使ったりと、家のオーディオシステムで音楽を聴くという流れにまで行かない人も多い。せっかくハイレゾ音源が身近になっても機器が対応していないもので聴いても魅力は半減してしまう。
日本オーディオ協会が取りまとめているハイレゾ規格対応の製品展開も進んでおり、良い音を楽しむための機器が一目で分かるようにしてきた。主要オーディオ各社もハイレゾ対応のロゴを取得し店頭でのアピールをしてきている。ハイレゾ音源を楽しむにはDAコンバーター(DAC)やデジタルオーディオプレーヤーが必要だ。Roonといった専用の配信基盤もあるため、身近にはなりつつあるが、まだ浸透しきれていない。
実際に音を聴くだけではなく、普段聞いている音楽で比較できる環境をつくることも大切だ。店頭やイベントで自分のスマホや携帯オーディオプレーヤーと接続して音を試せる場をつくるケースも増えている。
アキュフェーズは長年、製品の貸し出しを行ってきた。自分のオーディオシステムに組み込んだ際にどのような音が鳴るか比較できないと購買行動にはつながらないという考えからだ。
機器を手軽に体感できるようなレンタルや手軽に高音質が楽しめるサービスなどの環境を増やしていくこともこれからは必要になるとみられる。