2025.07.25 【育成のとびら】〈54〉 卸・小売の’25年度新入社員のキャリア志向、管理職志向は7年間で最低の割合

5454

 前回は、2025年度の製造業の新入社員のキャリア志向やキャリア自律のサポート方法について紹介した。今回は、卸売業・小売業の新入社員のキャリア志向について、過去との比較を含めて紹介する。

 「将来会社で担いたい役割」について質問した結果、卸売業・小売業では「特にキャリアについての志向はなく、楽しく仕事をしていたい」(28.2%)がトップだった。次いで「組織を率いるリーダーとなり、マネジメントを行いたい(管理職)」(27.9%)となり、「まだはっきりしておらず、今後決めていきたい」(24.4%)、「専門性を極め、プロフェッショナルとしての道を進みたい(専門家)」(18.3%)と続いた(図1)。

 過去の結果と比較してみると、管理職志向は19年度から22年度まで毎年増加していたが、23年度から減少に転じ、25年度は過去最低の割合だった。最も高かった22年度よりも9.1ポイントのマイナスで、「キャリア志向なし」に初めて抜かされた(図2)。

 ただ、管理職志向は減少傾向にあるものの、他業種と比べてみると2.9ポイント高く、相対的には管理職を目指す人が多い。半面で専門家志向は他業種よりも9.4ポイント低いことも特徴だ(図1)。

 その理由の一つとして、店長やリーダーの業務内容や役割は、新入社員でも想像しやすく、自身の今後のキャリアをイメージしやすいためだと考えられる。

OJT依存のリスク

 管理職やリーダーの育成は組織にとって必要不可欠で、将来の管理職育成を見据えた教育の仕組みを構築することが重要だ。未来の管理職・リーダー候補として成長するためには、新人のころからビジネスの基礎的な知識・スキルの土台を築く必要がある。

 卸売業・小売業に限らず、新入社員の育成施策として、OJT(経験豊富な職場の上司・先輩が、実務を通じて助言する育成手法)を重視する職場は多い。

 ただOJTは重要な取り組みだが、現場の実務経験に基づいた育成だけに依存してしまうと、指導者の指導内容や任される職務内容、新入社員と指導者の相性などにより、成長に個人差が現れやすくなってしまうという課題もある。

 特に論理的思考力、時間管理力、コミュニケーション力といった基礎として必要かつ業務を進める上で重要なビジネススキルは、OJTによる育成のみではカバーしづらいのが実情だ。

 新入社員のうちに現場や実務だけに依存せず、基礎的なビジネススキルの土台を身に付けるには、全社的な育成計画の立案と実行が重要になる。

 入社1年後にどのような力を身に付けていてほしいのかという理想像から逆算することが必要だ。OJTで何を学ぶべきなのか、OJTで身に付けきれない知識やスキルをどうやって補完する仕組みをつくるのかを、人事だけでなく現場管理職らが一体となって検討すべきだろう。

 次回は情報通信業の新入社員の成長意欲について紹介する。(つづく)

 〈執筆構成=ALL DIFFERENT〉

 【次回は8月第2週に掲載予定】