2025.08.08 【育成のとびら】〈55〉今年の情報通信業の新入社員、他業種より「成長につながる仕事」を求める傾向

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 前回まで5回にわたって、2025年度の新入社員の特徴や育成のポイントなどを見てきた。25年度シリーズの最終回は情報通信業の新入社員の成長意欲を取り上げたい。

 情報通信業の新入社員に、今後取り組みたい仕事について質問したところ、トップは「楽しくてやりがいのある仕事」(64.9%)となり、「自身の成長につながる仕事」(47.8%)、「自分のペースでやり切れる仕事」(40.2%)と続いた。

 情報通信業以外の全業種(以下、他業種)の新入社員の回答と比較すると、1位は5.3ポイント低かった一方、2位と3位は他業種よりそれぞれ8.2ポイント、10.3ポイント高い結果になった(図1)。

 自分のキャリアアップにつながる理想の上司については、「間違いを指摘して正してくれる」が58.9%でトップ。次いで「仕事やキャリアの悩みを相談できる」(45.2%)となり、3位が「具体的に手順を細かく教えてくれる」(40.9%)だった。2位の「仕事やキャリアの悩みを相談できる」は、他業種より5.9ポイント高かった(図2)。

 この二つのデータから、情報通信業の新入社員は、成長につながる仕事を求め、上司や周囲の力を借りてキャリアアップを望む傾向があり、成長意欲が高いことが推察できる。

 情報通信業は技術革新のスピードが非常に速く、常にスキルアップに取り組まなくてはならないことを新入社員も理解しているのだろう。

成長の落とし穴

 成長意欲が高いことは歓迎すべきことだが、新入社員は意欲を注ぐ対象が専門分野に関する知識・スキルに偏りがちな点に注意が必要だ。

 情報通信業に入社する新入社員は、学生時代に専門スキルを学んできた経験者とそうではない未経験者がおり、それぞれ陥りやすい、つまずきポイントがある。

 経験者は、専門的な知識・スキルの面では、同期の中でしばらくリードできるだろう。ただ、自己評価が高くなりがちで長期的な成長に必要な学習習慣や内省習慣などが身につかないケースがある。

 一方、未経験者は、知識・スキルの土台がないため、「こんなことを質問してもいいのか」と、質問や相談をためらいがちだ。特に、情報通信業は客先に常駐するケースやリモートワークがあり、直接的な指導を受けづらい職場で働くことも多い。

 物理的な距離が離れていると、困ったことがあってもすぐに上司や先輩に頼りにくい。その状態が続くと新入社員がさらに萎縮してしまうという悪循環が発生し成長や成果に支障が出てきてしまう。

 経験者であれ、未経験者であれ、成長の土台となるのは、適切な「報連相」を行えるコミュニケーション力やタイムマネジメント力、論理的思考力といった本質的・汎用(はんよう)的なビジネススキルだ。この土台がなければ、専門的な知識やスキルは発揮されにくい。

 しかし、新入社員の段階では気づきにくいため、企業側が個人や組織の成長の土台となる本質的・汎用的なビジネススキルの重要性を伝達し、習得を支援していく必要がある。この支援こそが新入社員の成長を大きく左右するため、企業側の仕組みづくりが大切になってくるだろう。

 次回は、新入社員・若手社員の育成で注目されているメンター制度について紹介する。(つづく)

 〈執筆構成=ALL DIFFERENT〉

 【次回は8月第4週に掲載予定】