2023.01.12 【計測器総合特集】23年 計測器の展望 次世代通信、半導体、自動車 世界的な需要拡大に期待

次世代通信はさらに高周波帯の活用へ(ミリ波試験に対応するアンリツのOTAチャンバー)次世代通信はさらに高周波帯の活用へ(ミリ波試験に対応するアンリツのOTAチャンバー)

 2022年の計測器業界は、IoT・デジタル化の進展に伴う半導体市況の活発化と、カーボンニュートラルに向けた世界的な動きを背景にしたEV(電気自動車)開発・生産の拡大により需要が増加した。

 自動車や電子部品、家電など製造業が新型コロナウイルスの影響から回復したことで、21年度の電気計測器の販売額は前期比12.4%増の8712億円となった。22年度も同0.5%増の8753億円と微増が見込まれている。

ミリ波帯本格化

 第5世代移動通信規格5Gは、サブ6帯(周波数6ギガヘルツ)など低周波帯域の開発投資が一巡し、今後は高周波帯域(ミリ波帯)の開発・製造に向けた投資が本格化する。25年度末までに、5G向けに新たに26ギガヘルツや40ギガヘルツ帯などのミリ波を含む周波数割り当てが予定されている。

 ローカル5Gを活用したスマートファクトリー、自動運転・ADAS(先進運転支援システム)などの車載向け、IoTなど5Gの活用が広範囲に展開することで新たな測定器需要が生じると期待される。

 5G-Advancedや、30年ごろの実用化が想定される次世代6G開発も国際的な主導権争いを伴いながら進展。6Gはメタバースやデジタルツインなどの普及に欠かせない通信インフラになるとされ、さらなる高周波帯であるテラヘルツ帯を使った大容量通信の実現を目指して、半導体・情報通信などテック企業の開発を計測技術が支える。

 社会のデジタル化によって流通するデータ量は飛躍的に増大。通信インフラやデータセンター(DC)の高速大容量化は喫緊の課題となっている。

 DCでは現行の100GbE(ギガビットイーサネット)、200GbEから、ハイパースケーラーと呼ばれる大規模事業者が主導して800GbEの超高速光通信ネットワークの導入が目指され、次世代のネットワーク試験器が活用される。

SiCやGaNなど

 半導体関連ではSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)など次世代パワーデバイスの需要が本格化。耐高温・高電圧特性や大電流特性に優れ、電力損失の大幅な削減が可能で、モジュールの軽量・小型化と省エネ・高効率を実現するパワーデバイスの評価では、高速信号を捉えるため、より高帯域・高速サンプリングの計測器が求められている。

 第3世代の酸化ガリウム(Ga2O3)の量産化も視野に入り、日本勢が強みを示すパワー半導体の開発を、測定器メーカーも後押しする。

 半導体製造プロセスの各所に設置して品質の安定化に寄与する計測器・センサーも23年は需要が継続する見込みだ。

 そのほか、電力の高効率化を図るパワーエレクトロニクス分野でも三相モーターの評価などで計測器の引き合いが引き続き堅調となっている。

 業種を問わず人手不足は深刻な課題であり、設備の点検や老朽インフラの監視などでは、各種センサーと組み合わせた測定システムでメンテナンス効率の向上が図られている。通信との組み合わせで遠隔からモニタリングするソリューションなど、測定器各社は提案に知恵を絞る。