2025.01.06 【新春インタビュー】イノベーターワン 久保島力社長
ブランドイメージの浸透に注力
―2024年も新たなチャレンジを続けてきましたが、この一年はいかがでしたか。
さまざまな機器を扱う
久保島 当社は21年の設立以来、広告配信関連サービス、AVやIoT機器などのシステムソリューション開発、AV機器の開発・販売、表示デバイスを使ったサービスを手掛けてきています。当社は液晶パネルの世界最大手のBOEテクノロジー社のマイクロLEDの日本独占代理店となっており、さまざまなLED製品や液晶機器も取り扱っていることも特長です。
総合ブランド「Miramage(ミラメージュ)」として、インタラクティブ・スマートボードや会議システム、デジタルサイネージ(電子看板)用のディスプレーや端末、配信システムを販売するほか、独自開発した裸眼3D(3次元)表示端末の開発にも成功し、11インチの3Dタブレットは「グーグルGMS」認証も取得しています。高精細4Kスマート液晶テレビの開発や販売も行っており、さまざまな要望に迅速で柔軟に対応できることも強みになっています。
この一年は製品展開だけでなくブランドイメージの浸透とサービスを丁寧に売ってきました。スマートボードも指名買いしてもらえるようにもなり、官公庁への納入もできました。
配信サービスにも投資してきました。ハード売りだけでなくサービスを組み合わせることが重要ですし、当社の配信サービスは大きな強みになっています。
新製品では、両面LEDや球体LEDといった新たな表示機器を発売しました。多くの引き合いがあり、用途に合わせた映像システムの組み込みや、当社のクラウド配信システムなどと組み合わせた映像配信などの対応も始めています。24年6月には当社ショールーム(東京都港区)をリニューアルし、xR(エクステンデッド リアリテ)スタジオを新設しました。LED関連では屋内と屋外のLEDディスプレーをはじめ、ライブスタジオ、シネマまで幅広く対応でき、放送やエンターテインメントなど幅広い企業から引き合いがきています。
―2023年に裸眼3Dディスプレーを出しましたが、反響などはいかがですか。
裸眼3Dへの関心高い
久保島 11インチ、32インチ、55インチ、65インチ、98インチの3Dディスプレーに加え、2次元から3次元への映像変換クラウドシステムとアプリケーションも独自に開発しています。裸眼3Dのコンテンツ制作のインフラ整備も含めて取り組んでいますので関心を示す企業も多いですが、時期尚早という印象も受けています。半面、24年には32インチの4K裸眼3Dディスプレーを開発しました。価格がまだ高額ではありますが、高精細の裸眼3Dディスプレーは医療用途などでの利用も期待できます。
早速3D撮影レンズなどを開発しているカメラメーカーから引き合いがきています。実際に3D撮影してもすぐに確認できないといった課題もあるので、ディスプレーとカメラシステムをセットにして提案できる可能性も出てきています。
当社のディスプレーはカメラで見ている人の目をトラッキングしますので、立ち位置をずらしても常に立体に見えます。裸眼3Dの環境も今後増えてくればコストも下げられるようになるので、ぜひ盛り上げていきたいと思っています。
―24年は4Kテレビの展開にも取り組みました。
久保島 当社はチューナー内蔵のスマートテレビとチューナーなしのスマートテレビを開発していますが、さまざまな要望に対し柔軟に対応してカスタマイズして提供できます。家庭用のテレビとしてだけでなく、ホテルの客室のテレビのように、通常の地上デジタル放送や衛星放送に加え、館内の案内やサービスなど、さまざまな情報配信を組み合わせることもできます。既にメディア企業と協業し、新しいコンテンツ配信の仕組みを組み込んだテレビを納入しています。
当社のテレビはグーグルのアンドロイドTVとグーグルTVの認証を取っていますので、通常のテレビとしても販売できます。昨年は、ミラメージュブランドでテレビを展開したほか、OEM(相手先ブランドによる製造)でテレビを納入しました。家庭用のテレビでも要望に合わせた機能やサービスを追加して開発することもできます。今後はミラメージュブランドでハイエンドテレビを開発していく計画で、自社サイトで販売していくことも視野に入れています。
xR映像撮影から制作まで可能
―xRスタジオも今までにない先進的な造りになっていますね。
久保島 新たに設置したxRスタジオは、壁に縦3メートル×横3.5メートルのシネマ仕様LEDディスプレーを2面、床面にも3.5メートル×3.5メートルのシネマ仕様LEDディスプレーを並べ、壁2面と床面の3方向にバーチャル空間映像が映し出せます。床面のディスプレーは上に乗れるため、ディスプレーに映し出した仮想空間の風景の中に実際に立っているように撮影できます。スタジオの組み立てからAR(拡張現実)映像の合成まで全て当社一社でできますので、短時間低コストでxR映像の撮影から制作までできます。
当社のバーチャルプロダクションスタジオのデザイン設計、サーバーシステムなど開発の知見などを生かしたバーチャルプロダクションスタジオも一括受注しました。このシネマ用スタジオのLED面積は約300平方メートルで現時点では国内最大のバーチャルプロダクションスタジオになる見込みです。LEDディスプレーは場所の大きさや形に合わせて自由に設置できることが大きな特長です。
当社は一社でディスプレーを提供し、サーバーシステム、設置から調整、拡張空間コンテンツ制作支援までを行います。3DCGなど映像制作には技術や知見が必要になりますので、人材育成にも取り組み、映像合成などができるエンジニアの育成も進めています。
―24年に国内最大規模の放送機器展「InterBEE」に出展し、シネマ級xRスタジオや新たな撮影提案などで多くの来場者から反響がありました。
奥行き感ある空間演出
久保島 InterBEEではシネマ級xR&バーチャルプロダクションスタジオを展示したほか、10ビット/120ヘルツのxRスタジオバーチャルプロダクションの機能などを紹介しました。今年発売した両面LEDや球体LED、透過型LEDなども展示しました。
展示会場では、背面に大型LEDディスプレーを設置し床面に鏡を置いて奥行き感のある空間をつくり、背面ディスプレーの前に別の100インチディスプレーを置くことで、背面の景色の前に別の映像が浮き出るような演出もしました。床面を鏡にすることで、まるで100インチのディスプレーが浮いているようにした演出も評判がよかったです。
イギリスのBrompton社のTessera SX40プロセッサーのフレームリマッピングモードとREDデジタルシネマ社の最新シネマカメラ V-RAPTOR[X]のPHANTOM TRACKモードを使ったライブデモも行いました。これにより、1台のカメラを使って複数のコンテンツストリームを同時にキャプチャーできます。従来2台のカメラが必要だったものを1台で実現したことは大きな革新で、多くの反響がありました。当社が日々開発を進めている映像技術を来場した放送関係者や放送機器関係者に直接提案できたことはよかったと思っています。
xRで日本から海外展開へ
―25年はどのような年にしていきたいと考えていますか。
久保島 当社の強みはハードからサービスまでトータルで支援できることです。特に25年は、xRとバーチャルプロダクションスタジオ関連で日本から海外へ展開を視野に取り組みたいと考えています。
まずは欧米をターゲットに、xRやライブスタジオ、バーチャルプロダクションスタジオの構築支援をできるようにしていきたいです。あわせて海外でのパートナーも探していきたいです。ハードルは非常に高いですが、逆にチャンスがあると思っています。
この領域はさまざまな技術を組み合わせる必要があるので、本格的なバーチャルプロダクションスタジオの構築を諦めているところも多いです。ここに当社が持つ技術やサービス、システムを提案できれば、シネマスタジオなどに伝わるはずです。映像づくりから機器の提供までトータルで支援できますので需要は多いとみています。海外進出に伴い、体制面も構築していきたいと考えています。
LEDは当社がさまざまなニーズに対して支援できるとみています。LEDは屋内外、ライブスタジオ、シネマなどさまざまな領域に適用できますので、パネル面積、金額ともに販売日本一を目指します。両面や球体などの新たなLEDの開発をしてきたように異形状の製品も作れます。もちろん映像制作も含め支援できます。
既存の建物を使って没入空間を作り上げることもできます。今後は首都圏地域だけでなく地方でシネマ用のバーチャルプロダクションスタジオを設置することで新たな市場を作り上げることにも取り組んでみたいと考えています。
(聞き手は電波新聞社 代表取締役社長 平山勉)