2025.01.10 【放送総合特集】放送機器各社 25年の戦略 池上通信機 田部伸一営業・マーケティング本部副本部長

田部 副本部長

FPU装置の更新が活発化

多彩なラインアップ投入

 昨年は、伝送ソリューションとIPシステムの強化に注力してきた。放送用の無線中継伝送装置のFPU装置の設備更新により受注は進んだ。また、ローカル局のサブシステムや放送用カメラの引き合いも継続しており、順調に推移している。

 60年にわたって伝送ソリューションのFPU装置を開発してきた当社は、標準型から4K対応小型送信装置、高周波部と制御部を一体型化したヘリ搭載用送信装置、TSL(固定回線)用装置など多彩なラインアップをそろえている。FPU装置の更新が本格化している中、ローカル局を中心に、まだ更新が進んでいない放送局も含めて、今後も新製品を投入しながらサポートをしていく。

 ヘリコプターからの空撮に使用する防振システムを備えたヘリカメシステムも順調に進んだ。ヘリコプター用カメラ防振装置、4K/HDマルチパーパスカメラ、モニターなどのヘリカメシステムに、新開発の4K/HDマルチバンド対応一体型FPU装置のヘリコプター搭載モデル「PF-903H」が加わった。軽量化が求められるヘリコプター搭載用として、小型化を追求し、高周波部と制御部を一体型にしたFPU装置として開発した。

 これら最新のヘリカメシステムは、官公庁向けの実績が堅調だが昨年初めて、放送局からも受注した。大阪の毎日放送、宮城の仙台放送と東北放送の2社が共同運航する新型ヘリコプターに搭載が決定している。

 IPシステムに関しては、昨年のInter BEEで、次世代の放送システムを構築するためのシステム統合管理ソフトウエア「ignis」を初披露し、好評を得た。SDIとIPのハイブリッドシステムに対応し、他社製品も含めてシステム全体の設定・運用・管理をトータルでサポートする。

 また、リモートプロダクションに活用できるIPに特化したCCUのIPエクステンションユニット「IPX-100」も初披露。さらに、IP対応ソフトウエアスイッチャーも技術展示し、IP対応製品を本格的に展開していくことがアピールできた。

 一方で、まだSDIベースでの製品の引き合いも多く、今後、IP対応製品のみならず、引き続きSDIに対応した製品も展開していく。中継車に関しては更新需要もあり、提案を進めている。

 カメラに関しては、4Kへのマイグレーションの動きが活発している中、東南アジアをはじめ海外では、HDスタジオカメラの需要が根強い。昨年4月にHD専用スタジオカメラとして、改めてHDポータブルカメラシステム「HDK-X500」を発表した。国内でもローカル局を中心に引き合いがあり、順調に伸びを見せている。

 今年は、放送局以外の公営競技、文教・学校法人、宗教法人といった非放送市場向けにも積極的に取り組む。現在、HDリモートカメラシステムの整備を進めている。例えば、密閉したハウジングの中にカメラを入れる際に、4Kカメラだと消費電力の関係で、夏場など周囲温度が上がった際にカメラが対応する温度を超え、ハウジングに入れられない課題がある。今後、競技場などで使われているリモートカメラの更新需要に向けて提案を進める。

 今後も顧客のニーズに合わせたより良い提案ができるよう、放送分野と非放送分野の両方での取り組みを強化していく。