2025.01.10 【放送総合特集】25年 年頭所感 日本ケーブルラボ 田﨑健治理事長

田﨑 理事長

「ケーブルテレビ再発明」へ

技術コンサルタントに

 昨年は、世界経済全体としては底堅い成長を続けましたが、本年は米国のトランプ新政権がどのような政策を実施していくかにより、各国の経済が大きな影響を受ける可能性があります。

 わが国では、賃金の上昇やインバウンドの回復など、マクロ的には明るい兆しもありますが、過疎化や高齢化が進む中で各地域がどのように持続・発展していくかが、ますます問われることとなります。

 ケーブルテレビを取り巻く状況としては、若者のテレビ離れや多チャンネル加入者の減少が続く中、ブロードバンドサービスで収益を確保していますが、今年も厳しい傾向が続くと考えられます。

 技術の視点では、昨年は生成AI(人工知能)の活用がさまざまな分野で進みました。外国語の翻訳や議事概要の作成などの日常業務に加え、原稿やイラスト、ショート動画の作成など創造的な分野においてもアシスタントとしての役割が可能になってきています。そうした状況の中、日本ケーブルラボでは、新技術をいち早くケーブルテレビ事業に活用し、「ケーブルテレビの再発明」に資するよう、調査研究や技術実証を進めております。

 生成AIに関しては、ラボがこれまでに制定した各種の「運用仕様書」や「調査研究報告書」などのドキュメントをAIに学習させ、利用者の知識や技術レベルに合わせて説明させるといった実証実験を行っています。また、昨年11月に開催した「ラボ・オータムセミナー」では、AIによる同時通訳システムを導入し、開催費の削減にも努めています。

 無線技術については、昨年の能登半島地震の災害対応で活躍した低軌道周回衛星の「スターリンク」サービスや新たに規格化されたWi-Fi7などの実機検証に取り組んでいます。

 日本橋茅場町のラボ事務所内にある「近未来ルーム」では、世界各国のFAST(広告付き無料動画配信サービス)を視聴できるようにしたり、また、長距離で動画も伝送可能なWi-Fi HaLowの実機展示などを行っています。今年もさまざまなアイデアを提案いただき、近未来のケーブルテレビの姿を体感できるような場になるよう、日々進化させてまいりたいと思います。

 ケーブルテレビ事業者の収益が多チャンネルサービスからブロードバンドサービスへと移行しつつある中で、日本ケーブルラボとして、AI/IoTなどの各種新技術の実証や情報セキュリティー人財育成など進めると同時に、地域DXが一層進展している中で、ブロードバンドに関しては「技術のシンクタンク」の役割を果たしてまいります。

 お客さまの一番身近にいるケーブルテレビ事業者にとって頼りになる「技術コンサルタント」として、一同努力してまいりますので、本年もラボ活動に引き続きご支援を賜りますようお願い申し上げます。