2025.01.16 【計測器総合特集】次世代エネルギーで〝水素〟に注目
チノーの水電解評価装置
サプライチェーン構築を支援
各社、評価・検査装置など提供
水素は脱炭素社会のための次世代エネルギーとして注目を浴びる。政府は水素社会実現に向けた政策を公表してきたが、水素を「つくる」「運ぶ」「使う」には、まだ課題が残る。水素のサプライチェーン(供給網)構築には計測技術の活用が必要となる。新たな市場の拡大は業界に収益機会を提供する。
水素は地球上で最も軽く、最も多く存在する物質。水や化石燃料のような化合物の状態で存在する。水の電気分解などにより獲得でき、枯渇することのないエネルギー源として注目される。水素を燃焼させてエネルギーを得てもCO₂が排出されないため、脱炭素社会のための次世代エネルギーとして大きな魅力を持つ。
水素は主に燃料電池によりエネルギーに変換される。燃料電池は水素と酸素を燃料とした発電装置であり、電気エネルギーだけでなく、水と熱エネルギーも得られる。一方、水素は可燃性ガスであることから、取り扱いには注意が必要だ。
脱炭素社会の実現に向けて、水素を次世代エネルギーとして活用するために政府は支援を行っている。
経済産業省資源エネルギー庁は2023年6月、水素基本戦略(アンモニアを含む)を改定した。水素社会実現を加速化させるために、水素導入目標として30年に最大で年間300万トン、50年に同2000万トンのほか、40年に同1200万トンを追加した。
24年5月には、水素社会推進法が成立、公布され、同10月に施行された。政府は水素などの供給、利用、貯蔵を早期に促進していく。
「つくる」「運ぶ」「使う」のサプライチェーン構築では、水を電気分解して水素と酸素を作る水電解の評価装置をはじめ、流量計、濃度計、各種センサー、燃料電池システムの検査装置など、計測技術が活用され、新たなビジネスチャンスが生まれている。
チノーは、燃料電池評価試験装置に90年代から取り組み、豊富な納入実績を持つ。水電解評価装置や濃度計なども提供しており、グループ会社の明陽電機は液体水素輸送船向け温度センサーなどを手掛ける。
HIOKIは昨年2月、水電解装置やMEA(膜電極接合体)のインピーダンス計測を行うシステム「ALDAS-E」を宇宙航空研究開発機構(JAXA)向けに納入した。また、水素関連の社内ベンチャーを「水素エナジーソリューション課」として組織化している。
グローバルな技術開発競争があり、水素ビジネスの拡大にはまだハードルがあるが、関連ソリューションでは計測業界や化学分析業界などの技術や装置が活用されるケースは今後も広がることが想定され、新たな収益機会を業界に提供する。