2025.01.29 【新春インタビュー】アイ・エス・ビー 若尾一史社長

車載、医療、金融など注力事業伸ばし成長継続

―2024年度も第3四半期累計(1~9月)で、創業以来の最高業績を更新されるなど好調な業績が続いております。

DXへの取り組み

 若尾 24年度も増収増益で推移しています。24年度から3カ年の「中期経営計画2026」をスタートしました。新中計の初年度でもあり、また、本格的に経営トップが私に代替わり(若尾逸雄会長が相談役に就任)したこともあって、社員が気合いを入れて頑張ってくれたおかげですね(笑い)。人手不足による売り上げの機会損失などもありますが、ICT市場をけん引するDXの流れを積極的に捉え、事業の成長につなげています。DXの要求のレベルが年々高度化してきていますが、顧客ニーズに対応できる組織体制を構築しています。また、強化しているクライアントと直接契約するプライム事業が売り上げ、収益面で業績に貢献しています。

 当社は、システム開発の受託が多く、チャレンジとしてプライム事業に取り組んできています。全てがうまくいくわけではありませんが、社員がプライム案件をやろうという気持ちになってきています。会社が変わりつつあるな、社員が着実に力をつけているな、と実感しています。

 ―プライム案件の取り組みを教えてください。

プライム案件増える

 若尾 お客さま数も、プロジェクト数も増えています。プライム案件は、業務システムや組込み機器、医療クラウドなどのビジネスインダストリー領域が、主に取り組んできましたが、モビリティ領域にも広がってきています。さらにはエンタープライズ領域においても取り組んでいくことを目指しています。

 プライム案件を全社的に進めていくために、情報、ノウハウの共有も必要です。これまでも車載分野では、技術交流会を開催し、社内の情報共有に取り組んでいます。今年の5月に本社を五反田から品川へ30年ぶりに移転します。それに加えて今回は五反田、新横浜、千葉の各事業所も品川に集約します。この機会に、グループ会社も含めて、横の連携を密にし、プライム案件の情報や、ノウハウ共有の場にできればよいと思っています。

 ―モビリティ、ビジネスインダストリー、エンタープライズ、プロダクトの4領域を主体に事業展開されておりますが、セグメント別の状況はいかがですか。

 若尾 モビリティは、成長市場である車載・モビリティへ事業を集中させています。車載案件は潤沢なので、従来の携帯端末や5G関連事業で培ってきた技術力とノウハウにより積極的に事業を展開していきます。ビジネスインダストリーは、業務システムのDX関連需要が引き続き旺盛です。医療・組込みは、既存顧客の受注拡大、新規案件とも好調で、会社全体のけん引役を担う領域として、強化していきます。エンタープライズは、安定して伸びており、ITインフラ、金融とも好調に推移しています。プロダクトは、IoT・Wi-SUN案件が堅調のほか、入退室管理などのセキュリティシステム、リカーリングビジネスが引き続き好調です。

 市場環境は、25年も変わらず好調に推移すると思います。車載、医療、金融、社会インフラなど注力事業をしっかり伸ばし、引き続き成長を目指していきます。

人事戦略に最優先して取り組む

 ―改めて「中期経営計画2026」の位置付けをお願いします。

未来への成長投資

 若尾 持続的成長への変革を目指して、2026年12月期で売上高375億円、営業利益27億円、また、3カ年の成長投資37億円を計画しています。未来への成長投資を進め、事業基盤の強化とグループの強みである技術と多様な人材が持つ力を結集し、新たな成長を目指しています。

 三つの重点戦略として「人事戦略」「情報サービス事業戦略」「セキュリティシステム事業戦略」に取り組みます。中でも人事戦略は、未来を担う人材を育成し、持続的な成長を可能にします。そのためにも最重要課題として、真正面から向き合い、未来への成長投資に徹底して取り組みます。ICT事業は、人材が全てと言っても過言ではありません。最近の傾向は、若手だけでなく、中堅の離職も増えています。当社も例外ではありません。リーダー職の育成はとても重要です。ワークライフバランス実現のため、働き方改革を推進、処遇改善、働く環境の改善のほか、教育制度の充実などに取り組んでいます。スキルとモチベーションを高めることで、社員一人一人が自らの成長を実感し、会社への愛着や貢献意欲を高め、エンゲージメントの向上を目指していきます。

 情報サービス事業戦略では、得意分野と地域性のグループシナジーを発揮し、事業基盤を拡大します。プロダクト開発、プライムユーザー開拓、パートナー企業との協業により、高収益化、多角的な成長を目指します。

 セキュリティシステム事業戦略では、収益性向上、リカーリングビジネス、ブランディング戦略を推進していきます。

 ―2024年11月にグループに加わった株式会社AMBC。その狙いについて教えてください。

 若尾 中期経営計画「情報サービス事業戦略」におけるソリューション事業の規模拡大と高収益化実現のための重要な施策として、M&Aを実施しました。AMBC社は経営戦略策定やビジネスモデル構築のコンサルティング、システム開発支援で豊富な実績と強みを持つ企業です。当社が強化していく上流工程に確かな知見を有しているため、今後、AMBC社と連携を強化することで、コンサルティングからシステム開発・運用までワンストップで高付加価値なサービスを提供できる体制を構築し、お客さまのビジネス変革をより強力に支援していきます。

 ―グループの連携強化やM&Aに対しては、どう取り組まれますか。

 若尾 当社は、グループ経営を原動力に成長してきました。国内では、グループ会社8社が、得意分野と地域特性を生かし協業・分業しています。海外は、ベトナムに拠点を持っています。技術交流、人事交流など行っていますが、個々の事業だけでなく、公共や社会インフラ分野などグループで提案できるようなシナジーの強化を進めていきます。また、今後は研修プログラムや採用イベントなど業務以外の連携も強化していきます。事業拡大のために当社グループが持っていない、あるいは補完できるサービス、製品を持っているところとは、M&Aも積極的に進めていきます。

 ―海外戦略の強化については、どのように取り組まれますか。

 若尾 海外事業は、拡大していきます。海外の展示会などにも参加していきます。例えばドイツなどはソフトウエア会社が多い。当社の組込み分野とのシナジーも期待できます。欧米の先進企業との連携を強化することで、ビジネスのやり方なども学べるところは少なくないと思います。オフショア拠点として、ベトナムにISBベトナムがありますが、ASEAN地域、中東地域なども含め、海外事業を強化していきます。

1000億円企業めざし基盤を強化

 ―いま話題の生成AI(人工知能)などについては、どんな取り組みをされていますか。

 若尾 当初は、セキュリティリスクを懸念し、社内業務への使用は行っていなかったのですが、今は、使える範囲で積極的に業務に取り入れるようにしています。ワーキンググループで情報共有をしたり、エンジニアリング分野では既に業務の中に取り入れ、開発期間の短縮化やコスト削減など業務の効率化を図っています。

 ―将来的には売上高500億円、さらに1000億円を目指されております。この道筋をお聞かせください。

 若尾 まずは500億円をしっかりクリアすることだと思います。この500億円の会社づくりが1000億円達成のキーになってくると思います。500億円が到達点でなく、規模的には1000億円を目指しています。500億円からは、利益や仕事の内容をさらに充実させ、規模を単に大きくするだけでなく、人づくりをはじめ、しっかりした基盤の強化など中身の強化が重要です。人材育成においては、社員一人一人の能力を最大限に発揮し、多様な人材が活躍できるような環境づくりにも力を入れていきます。M&Aは、あくまで成長戦略の選択肢の一つであり、目的は規模の拡大に加え、技術力や顧客基盤の強化です。500億円までは規模拡大のM&Aも取り組んでいきます。さらに1000億円を目指すには、シナジー効果が見込める企業とのM&Aを厳選し中身を充実させ持続的成長を目指します。1000億円も見えてきます。私が現役でやっている間には、手の届くところまでいきたいですね。世界に通用する会社にしていくことが私のミッションです。

 アイ・エス・ビーグループは企業理念に「夢を持って夢に挑戦」を掲げています。今後も、卓越した技術と魅力ある製品・サービスで心豊かに暮らす笑顔あふれる社会づくりに貢献していきます。

(聞き手は電波新聞社 代表取締役社長 平山勉)