2025.03.13 【防災DXの新展開➂】通行しやすい社会づくり 福岡市の学生団体がルート共有アプリを災害時にも
街歩き参加者とともに写る内山氏(左から3人目)(提供写真)
通行しづらい道を避けて通れるようにする――。そんなバリアフリーの社会を実現するルート共有アプリで存在感を放つのが、福岡市内を中心に活動する学生と社会人でつくるアプリ開発団体「ダイバーズプロジェクト」だ。アプリを防災に生かす展開にも意欲を示している。
同団体が運営するのが「ダイバーズマップ」と名付けたアプリ。発案したのは、同団体の代表で自身も車いすを利用する内山大輔氏だ。内山氏は「まず福岡県内で広めてルートを増やしたい」と、意気込みを語る。
ダイバーズマップは、利用者が投稿したルート情報を蓄積し、検索結果として表示させる仕組み。ウェブ版とスマートフォンの基本ソフト「アンドロイド」対応のアプリで提供。出発地と目的地のキーワードを検索するだけで、地図アプリ「グーグルマップ」上に通行しやすいルートを表示してくれる。ユーザー登録をすれば、表示された経路を編集し、「信号の切り替わりが早い」といった説明付きで投稿できる。
こうした仕組みは、スポンサー企業の協力を得て無料で提供。一段の利用者増に向けて協力企業をさらに増やそうと意気込むが、マップの存在は十分に知られていない。
そこで同団体は、街歩きイベントなどを通じて認知度を高めたい考えだ。30日には福岡市中央区の複合商業ビル「ONE FUKUOKA BLDG.」で実施予定だ。
既にイベントを10回開き、毎回40~50人が出席。車いすが必要な当事者以外も参加する。内山氏は「災害時に車いすに乗っている人をどう助ければいいかわかることにつながる」と手応えを強調する。
2024年1月に発生した能登半島地震をきっかけに「災害時にも使えるのではないか」という声が寄せられた。内山氏は「バリアフリーで安全な道を普段から共有すると、災害時の安心につながる」と考えている。
◇開発のきっかけ
中学2年の頃から車いす生活を送っていた内山氏。道路の段差や雨が降った際に屋根のない道を通ると濡れてしまうといった不便さを感じていた。IT系の専門学校に通っていた22年に、九州の学生がアプリ開発に挑むコンテスト「九州アプリチャレンジ・キャラバン」へ応募。これを機にダイバーズマップの開発を始めた。現在、NECソリューションイノベータで働く傍ら、今回のマップ事業にも取り組んでいる。
今後の目標は、ダイバーズマップの使い勝手をより高めることだ。AI(人工知能)や人工衛星をルート情報の入力に役立てる展開にも着目。移動しながらルート状況をリアルタイムで確認できる仕様にしたい考えだ。「iOS」対応アプリのリリースも目指している。
同団体は、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けた科学技術振興機構(JST)社会技術研究開発センターの研究開発プログラムにも参画。移動しやすい社会づくりも後押しする。
学生発のアイデアは日常時や災害時の垣根をなくす「フェーズフリー」のサービスとして、移動社会の未来を切り開こうとしている。