2025.03.19 「意識しないで健康管理」でヘルスケア市場に新風 東大発issinの程涛CEOに聞く
「家族の健康を守る」――。そんな思いで日常生活に溶け込む話題の商品を続々と生み出すのが、東京大発スタートアップのissin(イッシン、東京都文京区)だ。14日には、指にはめるだけで無意識に心身の回復度を可視化してくれる健康管理デバイス「スマートリカバリーリング」を発売。新たに6億3000万円の資金も調達し、一段の成長を目指す。2021年の創業以来、ヘルスケア市場に新風を吹き込み続ける程涛(テイトウ)CEOに製品に込めた思いを聞いた。
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―製品展開の方向性を教えてください。
程CEO 生命力あふれる生き生きした状態をサポートする製品を開発している。体重計測から始め、「食事」や「運動」に関わる開発にも取り組んできた。「睡眠」や「ストレス」も重要な要素で、今回の新製品で全てカバーできると思っている。
この4つの要素は互いに影響し合い、それぞれを把握した上で、自分に合う対応で生活習慣を改善することが大事だ。単に計測するのではなく、計測データに基づいた改善を促す。
仕事などが健康管理よりも優先順位が高くなりがちだが、意識しないで健康状態を計測し把握できるということを大切にしている。
体組成を測定できる「スマートバスマット」や「スマートリカバリーリング」をハードウエアの軸として、計測データに基づいてユーザー自身が体調を把握・管理し改善につなげていくという流れをサポートしたい。
―スマートリングの開発に至った経緯を教えてください。
程CEO まず枕などのデバイスを思いついた。しかし、睡眠計測だけの機能は求めず、心身の回復力に注目した。
自社にとって初めてのウェアラブルデバイスだ。スマートバスマットとは違い、24時間計測する。これからユーザーの母数を増やし、計測したデータをどう活用するかという研究も行っていきたい。
スマートリングは、個別に装着する製品の特性上、家族間で共有することが難しいが、それぞれがリングを装着すれば、夫婦で互いの計測結果から異変に気づける。今後、複数ユーザー間で計測結果を共有できるようにしていきたい。いずれ子どもでも装着できるようにと考えている。
―ユーザーに「ウェリーくん」というヘルスケアAI(人工知能)が助言する仕組みは心強いです。
程CEO 健康組合や自治体などの法人向けに、24年4月から生活習慣改善プログラム「スマートデイリー」を提供し、90の法人と契約している。そこでノウハウを蓄積し、健康状態の改善をパターン化して可視化している。そのデータをAIに学習させ、一般ユーザーでも活用できるようにしたい。そのインターフェースがAIのウェリーくんだ。
―2月に第三者割当増資などで6億円超の資金を調達した狙いは。
程CEO 調達した資金は主に新規事業の研究開発に充てるとともに、海外展開にも活用したい。徐々に自社製品の需要が拡大する日本市場で、さらに事業を拡大していく。とはいえ、常に海外市場も見ている。
―海外で注目する国はどこでしょうか。
程CEO 米国では、コーチングを行いユーザーの行動を変えるサービスを提供している企業が複数ある。説教ではない形で行動変容を促し、ユーザー本人に気づきを与え、健康状態を変えていくサービスに魅力を感じる。