2025.03.13 「つけるだけで回復促す」 東大発スタートアップからリング状の健康管理デバイス登場

薄さ2.2ミリメートルにこだわったスマートリカバリーリング

登壇する程CEO登壇する程CEO

充電ケースに入ったスマートリカバリーリング充電ケースに入ったスマートリカバリーリング

 指輪のように装着するだけで健康状態を把握し体調の回復につなげる――。そんなリング状の健康管理デバイス「スマートリカバリーリング」が14日に発売される。仕掛けたのは、中国出身の人気パズルゲーム開発者で知られる程涛(テイトウ)氏が起業した東京大発スタートアップのissin(イッシン、東京都文京区)だ。

 程氏がCEОを務める同社が満を持して投入した今回のデバイスは、厚さ2.2ミリメートル、重さ約3グラムという超軽量のリングだ。指に装着するだけで、自身の「睡眠スコア」「ストレスレベル」「活動量」を計測し、専用アプリで詳細なデータを確認。取得したデータは分析し、毎朝の回復力を示す「リカバリースコア」として可視化してくれる。

 こうした健康データを統合管理してくれるのが、風呂上がりに乗るだけで体重管理できる2022年発売の「スマートバスマット」と同じアプリだ。バスマットの測定データも統合すれば、包括的な健康管理を実現できるようになる。

 リングの利用者には「ウェリーくん」と名付けたヘルスケアAI(人工知能)がパートナーのように寄り添い、栄養バランスなどを提案してくれる。ゲーム感覚でAIのアドバイスに従い行動すると、同社のオンラインショップで使えるポイントが得られる。

◇「家族」テーマに製品開発

 まさに多彩な工夫が散りばめられたリングだが、その背景には「家族」をテーマにヒット製品を育てた実績がある。

 東大大学院に在籍中に起業した程氏は、18年に照明一体型のプロジェクター「ポップインアラジン」を生み出し、25万台超を売り上げた。21年開発のパズルゲーム「スイカゲーム」も消費者の心をつかみ、ダウンロード数が1100万超を記録した。

 21年にイッシンを創業後も、家族の健康を守る思いを込めた製品を次々と開発。23年には、リストバンド型のデバイスを装着し運動習慣を身につける「スマートファイブミニッツ」を発表した。

 こうした展開を経て投入したのが今回のリング。スマートファイブミニッツ同様にスイカゲームからヒントを得て、楽しく健康管理を続けられる工夫を取り入れた。

 程氏は「厚さが2.5ミリメートル以下でないと装着感に違和感があるため、1ミリメートルをどう削るかを考え試行錯誤した」と振り返る。

 外側の素材はチタンで、内側は合成樹脂。日常生活やシャワーにも耐える生活防水仕様となっている。2時間でフル充電となり、約7日間の連続使用が可能だ。

 程氏は「1日の始まりに自分がどういう状況でスタートするかを可視化し把握することが大事」と、日々変化するコンディションを理解した上で行動する必要性を説く。

 種類も多様で、米国のUSサイズで8~13号を用意。さらに内周が小さい6号と7号は6月20日に発売する。本体のカラーは、マットブラックとマットシルバーの2色から選べる。価格は税込み2万9800円で、製造側と直接交渉し商社を通さないことで価格を抑えたという。

◇販売でKDDIとタッグ

 全国のKDDI直営店が販売時に提案するほか、auのオンラインショップなどでも購入できるようにした。 KDDIが、携帯販売の経験を生かした販売方法をイッシンに提案。選べるリングサイズが豊富で在庫を抱えやすいという課題を踏まえ、商品カードを購入し専用サイトでサイズや色を選ぶスタイルを採用した。リングは、KDDIの健康促進アプリケーション「auウェルネス」と連携することも可能だ。

 KDDIパーソナル第1営業本部商品需給部関連商品1グループの久保雅彦グループリーダーは「スマートウォッチも便利だが、ウェルネスに機能を限定したリングの意義は大きい」と新製品の優位性を強調した上で、店舗に来店する高齢者のニーズを取り込むことにも意欲を示した。

 「楽しい健康増進」をテーマにハードとソフトの両面に徹底的にこだわったリング。これを新たな健康パートナーに育てる挑戦に注目が集まりそうだ。