2025.07.23 JAXAが宇宙機にダイヤモンド半導体実装へ 気鋭スタートアップと共同研究

PDSの立ち上げには学問の活用を図る新たなスタートアップ企業の創設・創業投資を行う早稲田大学ベンチャーズが関わった。

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)が次世代材料の合成ダイヤモンドを使ったパワー半導体を手掛けるスタートアップ、パワー・ダイヤモンド・システムズ(PDS、東京都新宿区)と共同で研究や実証事業を始めることが、23日に明らかになった。高電圧や大電流を扱える素子「パワーMOSFET」を宇宙機に適用することを目指す。

 放射線に強く高温環境でも動作するダイヤモンド製パワーデバイスを宇宙機向けに実用化することを狙う。宇宙探査や地球観測などで電力変換の機能を担うパワーデバイスには、高い信頼性が求められるためだ。

 PDSは早稲田大学理工学術院の川原田洋元教授の研究成果をもとに、事業化を目指して2022年に設立された。基板に対して垂直に電流が流れるトランジスタ構造である縦型の「MOSFET」を実現したことに強みがある。電流が基板の表面を水平方向に流れる横型に比べて集積密度を高めることができ、大電力を制御できる。

 同社の技術を、JAXA が持つ宇宙環境評価技術や宇宙機システムの知見と融合させる。1年以上にわたりJAXAと技術的な検証や議論を重ねて、正式な共同研究に至った。

 PDSの藤嶌辰也CEOは過去の取材でダイヤモンド半導体の用途に触れ、「キラーアプリケーションの探索に注力している」と話していた。今回、宇宙分野への展開が明らかになった格好だ。