2025.07.30 ルネサス、高耐圧GaN新製品を投入 SiC・IGBT開発は停止へ
高耐圧650VのGaNパワー半導体
ルネサスエレクトロニクスが、高耐圧650V対応のGaN(窒化ガリウム)パワー半導体の新製品を発売した。新たなプロセス「第4世代プラス(Gen IV Plus)」を採用し、ダイサイズを14%削減、オン抵抗を30ミリオームまで抑えることで電力効率を高めた。AI(人工知能)サーバーやEV(電気自動車)充電システム、UPS(無停電電源装置)、太陽光発電インバーターなど幅広い用途に対応する。
ルネサスは2024年6月、米GaN企業トランスフォームを買収。独自の「SuperGaN」技術を軸に、低損失・高効率なスイッチング性能を実現するカスコード構造の採用など、製品の競争力を強化している。新製品は、既存設計との高い互換性を持ち、多様なパッケージで提供。1kW〜10kW級の高出力アプリケーションにも対応する。
生産体制では、自社ファブと外部ファウンドリーを活用。150mmラインは国内の自社ファブで対応し、200mmラインは米Polar Semiconductorが担う。将来的には甲府工場(山梨県甲斐市)で300mmラインの構築も視野に入れる。
ルネサスは、設計からエピウエハー製造、デバイス生産までを一貫対応可能とし、半導体の後工程を担う「OSAT」を複数活用しながらパッケージングを行っている。
パワープロダクトグループGaN事業部の細田勉氏は「普及拡大が進むAIでは消費電力が大きな課題となっており、より高効率な電力への要求が高まっている。今後、GaN市場は急拡大すると見込んでおり、当社の持つGaNに関する豊富なポートフォリオを活用し、GaN事業の成長につなげる」と強調する。今後はマイコンやアナログ製品と組み合わせたワンストップソリューションでの提案を加速する方針だ。
同社は6月末にSiC(炭化ケイ素)とIGBTの開発を一旦停止することを明らかにしている。今後はGaNをパワーディスクリート事業の中核に据え、事業拡大を図っていく。
<執筆・構成=半導体ナビ>