2025.07.27 デジタル庁、ソフト調達の支援サイトで交流会 自治体の活用促進へ
デジタル庁で開かれた「デジタルマーケットプレイス活用交流会」=東京都千代田区
デジタル庁は、国や地方自治体などの行政機関が業務用ソフトウエアを迅速に調達できるよう支援するサイト「デジタルマーケットプレイス(DMP)」の活用を促そうと、25日に東京都千代田区の同庁で自治体職員を対象にした交流会を開いた。DMPには、公共調達への民間事業者の参入を促しソフト産業の振興につなげる狙いもあり、出席した平将明デジタル相はソフトの選択肢を広げることに意欲を示した。DMPを活性化し利用者を増やす取り組みの真価が問われるのはこれからだ。
DMPは、クラウド経由でソフトを提供するSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)とその導入支援を行う販売会社のサービスを比較・検討できるようにしたカタログサイト。同庁と基本契約を結んだ事業者のソフトが登録されており、行政ユーザーは幅広い選択肢の中から目的に合うものを選ぶことができる。事業者にとっては多くのユーザーの目に触れる利点が得られ、営業コストの削減につながる。同庁はこうした仕組みで調達プロセスを簡素化することで、中小企業やスタートアップを含めた多様な事業者の参入を促したい考えだ。
ユーザー数の増加を目指す
今回の「デジタルマーケットプレイス活用交流会」は、自治体にDMPへの理解を深めてもらおうと企画した。この中で官民が、「DMPを活用したSaaS調達への期待、DMPが今後目指すべき姿」をテーマに意見を交換。同庁の担当者は、政策実現に向けてソフトを探索する企画段階からDMPを使い、「調達の選定でも活用してほしい」とアピールした。DMPに登録する事業者は、7月時点で280社。登録ソフトの数も総務や窓口対応を中心に360件まで伸びてきたものの、ユーザー数を増やす取り組みは途上にある、そこで同庁は年末に向けてサイトを改修する計画で、自治体が利用シーンに合わせて使えるよう改善したいという。
事業者側から参加したのが、行政サービスのデジタル変革を支援するグラファー(東京都渋谷区)でプロダクトマーケティングを務める担当者。同社担当者は、事業者と行政ユーザーが納得して契約に進めるよう双方のギャップを埋める工夫を望むとともに、認知度を高める活動を促す必要性も強調。さらに担当者が「どういう使われ方をして、どういう効果が生まれて、どういう事例があるのかといった項目を増やしてほしい」と要望すると、登壇した浜松市デジタル・スマートシティ推進課の担当者が賛同した。同課担当者は、DMPで調達したサービスの導入支援にも触れ、「サービスは入れて終わりではなく、職員への操作研修も重要」と指摘。地域に寄り添う支援に期待を寄せた。
購買意欲をかき立てるサイトへ
また交流会には、多様な行政手続きをスマートフォン上に実現できる「スマホ市役所」を手がけるBot Express(ボットエクスプレス、同港区)や、インフラ管理を効率化する空間情報共有プラットフォーム「SonicWeb-DX」を提供する測量大手の国際航業(同新宿区)などの6社も参加し、DMPに掲載するサービスを紹介した。平デジタル相は「ビジネスマインドを持って、購買意欲をかき立てるようなデジタルマーケットプレイスにどう進化させるか。(交流会で挙がった意見や視点を)できるだけ反映していきたい」と強調。事業者に対しては、「切磋琢磨して選択肢を増やしてほしい」とエールを送った。
DМPで先行するのは英国で、同庁に相当するGDSの主導で2019年に導入した。これにより、大手企業中心だったIT調達比率が変化。21年にDMPを通じた調達額の4割を中小で占めるようになり、調達コストの削減にもつながった。一方で日本は、行政機関が求めるシステムの仕様に合わせて複数社が提案内容と価格を示し両面で最も優れた事業者が落札する「総合評価方式」を取り入れてきたが、「調達期間が長く、手続きが官民双方で負担になる」「参入障壁が高く、市場の透明性が低い」といった課題があった。そこで同庁は英国のDMPを参考に、IT調達の迅速化と調達先の多様化を目指して検討。テスト版を経て24年10月に正式版を発表した。今年3月には、ユーザーが調達に利用できる環境を整えた。