2026.03.27 島津製作所、知財業務をAIで自動化 4月設立の新会社でプラットフォーム外販
新会社の設立会見に登壇した(左から)島津製作所の阿久津部長、川村主任、西本常務執行役員CTO、IP Agentの坂本社長、長澤氏
島津製作所は、特許調査などを行うIP Agent(東京都新宿区)と共同で、知的財産部が開発した知財関連業務の自動化プラットフォームを提供する子会社「Genzo AI」を4月1日に設立する。特許出願に関連する業務にAI(人工知能)を活用することで、人手や予算不足などを解消し、日本の知財力の底上げを目指す。
知的財産の分野では、製品サイクルの短期化による業務の納期短縮、海外での特許出願のための外部の弁護士や弁理士への委託費用の高騰、ベテランの思考プロセスが言語化されず技術承継が困難といった問題がある。
島津製作所の知的財産部は、これらの課題を解決するため、23年に生成AIを活用した業務自動化プロジェクトを開始。現役の知的財産部の社員の思考プロセスを分析し、プロンプト(指示)として言語化することで、実務に直結するシステム「Genzo AI」を開発した。同社の知的財産部は、国内特許の審判や審決取消訴訟を自社内で処理しており、通常15%程度の勝訴率は、50%を超えている。
25年に社外のイベントで知的財産部の取り組みを発表したところ、「自社でも導入したい」と反響があった。25年11月に同社内の新規事業アイデア審査会で、外販の提案があったことから、IP Agentとともに新会社を設立することになった。
島津製作所の西本尚弘常務執行役員CTOは「当社の現場で磨き上げられた知財ノウハウと、IP Agentの知財営業力をかけ合わせた新会社となる」と強調する。
今回提供するGenzo AIは、先行文献調査や侵害予防調査、拒絶理由通知への対応案の提案、翻訳など知財関連業務を幅広く網羅。直感的に操作できるデザインを採用し、特許庁の拒絶理由通知や、開発資料などをドラッグし「生成」を押すと、対話形式で、AIが応答する。要所で人がチェックし修正を加えることで、ハルシネーション(誤情報生成)を抑止する。
同社では、Genzo AIを導入した結果、年間20億円ほどかかっていた外部委託コストを8000万円削減、発明届け出業務の工数は50%削減された。他社特許のスクリーニングの手作業も90%削減でき、新入社員も即戦力として業務従事が可能となった。
知的財産部の阿久津好二部長は「コストをさげながら、研究開発のスピードを上げ、よりよい特許を出願することで、日本全体の産業競争力を上げていく」と展望を述べた。
AIに入力したデータは、国内のAWSサーバに保存され、ユーザーが任意のタイミングで削除できるなどセキュリティ―面も配慮されている。
現在、トライアル利用をしている企業からの声も反映し、販売開始後に新たな機能を追加予定だ。
SaaS形式で提供し、企業規模に応じた基本料金とAIトークン利用料に応じた従量課金で年間利用料が決まる。販売希望価格は、100万~1500万円(税込み)。始めは、大手の電機、化学、製薬メーカーを中心にアプローチを行い、26年度に40社、30年度に320社への導入と売上高15億円を目指す。民間企業のほか、大学や研究機関への導入も見込む。
知的財産部の川村亮太主任は「属人化しやすい業務を均質化し、だれでも高品質なアウトプットをだせるようになると同時に、社内で処理できる範囲を広げ、知財部がこれまでできていなかったことにチャレンジする環境を提供していく」と話す。
新会社の社長には川村主任、社外取締役に阿久津部長、取締役執行役員営業担当は、IP Agentの坂本聡社長が就く。また、元キヤノン知的財産法務本部長兼専務執行役員の長澤健一氏が顧問を務める。IP Agentの営業チーム約10人も業務委託の形で勤務する。










