2026.06.22 【育成のとびら】<76> 経験の幅が広い中堅社員ほどキャリア志向が明確な傾向 多様な業務経験の設計がキャリア自律を支える
中堅社員のキャリア不安と成長
前回、中堅社員(ミドルキャリア)の約半数が明確なキャリア志向を持っておらず、キャリアが描けず働き続けることに不安を抱えている人が約3割に上ることを紹介した。中堅社員はライフステージの変化による葛藤を抱えることが多い世代だ。半面で、この世代に対する成長支援やキャリア形成支援が手厚いとは言い難い企業も多い。では、中堅社員のさらなる成長とキャリア形成を支援する上で鍵となる要素はあるのだろうか。
2025年に当社ALL DIFFERENTとラーニングイノベーション総合研究所が実施した調査で、中堅社員のキャリアへの考え方は「業務経験の幅の広さ」と大きく関係していることがわかった。
調査は中堅社員(社会人5年目以上15年未満、役職に就いていない社員)800人を対象に行った。非定型業務の機会の多さや、他部門と連携する機会の多さについて質問し、キャリア志向との関係性を分析したところ、業務経験の機会の有無によってキャリア志向の違いが明らかになった。
非定型業務の機会がある中堅社員(「とてもよくある」「たまにある」の回答者の合計)のうち、キャリア志向が明確だった層は64.4%となった。内訳は「管理職志向」(10.7%)、「専門職志向」(24.1%)、「メンバー志向」(26.1%)、「独立志向」(3.5%)。また、「キャリア未定」は19.1%、「キャリア志向なし」は16.5%だった。
一方、非定型業務の機会のない中堅社員(「あまりない」「全くない」の回答者の合計)のうち、キャリア志向が明確な層は29.1%。内訳は「管理職志向」(2.4%)、「専門職志向」(7.3%)、「メンバー志向」(17.0%)、「独立志向」(2.4%)と、いずれも機会のある層の割合を下回った。「キャリア未定」は11.2%、「キャリア志向なし」は59.7%だった(図1)。
同様に、部門間連携や全社プロジェクトの「機会あり」(「とてもよくある」「たまにある」の合計)と回答した中堅社員のうち、キャリア志向が明確だった割合は67.7%で、「キャリア未定」は20.7%、「キャリア志向なし」は11.6%だった。

それに対し、部門間連携や全社プロジェクトの「機会なし」(「ほとんどない」「全くない」の合計)と答えた人のうち、キャリア志向が明確だった割合は35.1%で、「キャリア未定」は16.4%、「キャリア志向なし」は48.6%と大きな違いが生まれた(図2)。
「いつも」とは違う業務を経験したり、「いつもの仲間」以外の人と仕事をしたりする機会がある中堅社員は、そうでない中堅社員に比べて、自分のキャリアを明確に持っている割合が相対的に高かった。
新たな業務への挑戦が、視野を広げる契機に
この結果には、キャリア自律の本質を理解する上で重要なヒントが含まれている。キャリア自律は、単に将来目指す職種や役割を明確にすることだけではない。働く個人が、自身の価値観や強み、ライフステージを踏まえながら、主体的にキャリアを選択し、学びと挑戦を通じて成長し続ける状態こそが、目指すべき姿だ。そうしたキャリアの選択や学び、挑戦の出発点となるのが、多様な業務経験の蓄積といえる。
多くの企業において、人材育成の取り組みは新人・若手や管理職層に重点が置かれ、中堅社員は「空白地帯」となりがちだ。成長の糧が現場の業務経験のみに依存することが多く、その業務経験自体が限定的であれば、学びや成長は停滞し、将来のキャリアを描きにくくなる。
特に、非定型業務や自部門内で完結しない業務に取り組むことは、業務経験の幅とともに自身の視野を広げるチャンスだ。これらの業務では、高度な思考力や進捗しんちょく管理力、コミュニケーション力が求められ、時に失敗や挫折も伴う。
しかしその経験こそが、新たな気づきややりがい、学びにつながり、次の挑戦意欲を生む契機になる。「これまでと異なる領域に挑戦したい」「新たな役割を担いたい」といった前向きな志向は、こうした経験の中から芽生えやすい。だからこそ、中堅社員のキャリア自律と成長を促すためには、企業と管理職が個々人の特性や経験、志向を踏まえたアサインメント(業務の割り当て)を実現する仕組みを整備する必要がある。
一方で中堅社員一人一人への支援は管理職にとって負担でもある。管理職が中堅社員の成長とキャリア形成を支援しやすい環境や制度を整えることもまた、企業の重要な役割だ。
中堅社員は、組織の中核として成果を支えるだけでなく、さらなる可能性を内包した人材ともいえる。人材開発・組織開発の研究者、ロンバルドとアイチンガーは、人が成長する際、「70%を仕事の経験から学ぶ」と提唱したが、まさに現場の経験が、中堅社員の成長を伸ばす上で核心となるといえよう。中堅社員が多様な経験、多様な学びを得る環境を整えることこそが、これからの組織力の差を生む鍵となる。 (つづく)
【次回は2026年7月13日号に掲載予定】
執筆構成 ALL DIFFERENT








