2020.11.02 【NHK技研90周年特集】開発と放送現場を支える有力企業・団体 放送衛星システム 井上樹彦代表取締役社長
井上 社長
放送衛星システム(B-SAT)は、BS放送関係者が一致協力して衛星インフラを構築・管理すべく、93年に設立されたオールジャパン体制の株式会社であり、BS放送における衛星インフラ提供会社としては国内唯一となっている。
B-SATは二つの使命を掲げている。一つは「いつでも、どのような状況の中でも、BS放送を継続してお届けすること」だ。
万が一放送衛星が故障しても、宇宙空間に修理に行くことはできない。そのような場合であっても放送を継続できるよう、常に複数の衛星を東経110度の静止軌道上で運用し、信頼性の高いバックアップ体制を確保している。
地上設備においても、自然災害や降雨減衰、保守に備えてバックアップ体制を構築しており、アップリンク設備は東京都渋谷区、埼玉県久喜市、千葉県君津市の3拠点、管制設備は埼玉県川口市と千葉県君津市の2拠点をそれぞれ整備・運用している。
二つ目の使命は「BS放送のさらなる発展・進化に尽力すること」だ。B-SATでは、NHK放送技術研究所が開発してきたISDB-S、ISDB-S3などのBS放送伝送方式に最適な中継器を搭載した衛星を調達・運用している。
4K・8K放送に利用される伝送方式のISDB-S3は、NHK技研との共同研究により、B-SAT所有の車載型地球局と放送衛星を使用して技術実証実験を行い、実用化された。そして、17年に打ち上げたBSAT-4aには将来の放送に使用することが期待される21ギガヘルツ帯の実験用中継器を搭載していることから、NHK技研とともに21ギガヘルツ帯の実験を行っており、19年の技研公開において紹介した。
今後も信頼性の高いBS放送の基幹局を提供するとともに、新たな放送の進化に尽力し、わが国のBS放送の発展に貢献していきたい。